2012/08/12

人、自然、建物が調和する空間創造 獨協大学が建設する「学生センター」

学生センターの完成予想
獨協大学(埼玉県草加市)は9月末の竣工を目指し、同市学園町の大学敷地内に「学生センター」の建設を進めている。人と自然と建物が調和する空間を創造する同施設は、「獨協さくら橋から始まるプロムナード正面にあり、現在進行中の『埼玉県水辺再生100プラン事業』による伝右(でんう)川親水護岸工事の完成と相まって、キャンパス最前線に位置する大学のシンボルになるものと期待される」(犬井正学長)。基本設計を石本建築事務所、実施設計と施工を大林組が担当。石本事務所がプロジェクトマネジメントを手掛け、効果的に事業を推進している。

◇自主活動を支援/自由な空間形成

 学生センターは、天野貞祐記念館(2007年3月竣工)を起点とするキャンパス再編の一環として、敬和会館(10年2月竣工)、東棟(同7月竣工)などに続いて計画した。老朽化している既存の部室棟の対応策として、耐震改修するよりも費用対効果が大きい、将来を見据えた新たな建物を建設することにした。
 計画の策定に当たっては、単に部室棟の建て替えではなく、一般学生も自由に利用できることをコンセプトに、部室の閉鎖的なイメージを払しょくし、開放性を追求した。建設場所も大学の顔とも言える、1棟の跡地とすることで、学生の主体的活動を大切にする大学の方針を前面に打ち出した。
 規模は、RC一部S造6階建て延べ9549㎡。機能面ではこれまでの部室棟の機能を発展的に引き継ぐとともに、学生ラウンジ、多目的スペース、総合的な学生サービス窓口を設けるなど、学生の自主活動を支援する一大拠点となる。
 1階は学生が自由に利用できるオープンスペースなどを設け、部室機能を3階以上に配置した。1階の多目的ホールは通常、フリースペースとして利用する。また、昼食時などに混雑している学生食堂(35周年記念館内)の状況を考慮し、東棟などと同様に食事ができ、くつろげるスペースを設ける。開放的で「見せる化」した空間を形成することで、学友会活動のPR・宣伝にもなり、学生の活動参加を誘発する効果も期待している。
 多目的ホールは大学祭や野外コンサートなどのイベントに対応できるよう、南面に大開口部(高さ約10mの可動ガラス)を設け、ホールに内蔵する舞台、ステージスクエア(広場)、天野貞祐記念館へと続く外部を一体化して使える魅力的な空間となる。


1階ロビーのイメージ。全学生が集う憩いの空間
◇地域との共生強く打ち出す

 同大学は、キャンパス再編に当たり、環境との共生を強く打ち出した「エコキャンパス・プロジェクト」を展開している。東棟の建設では、国土交通省の「平成21年度住宅・建築物CO2推進モデル事業」に大学単独では唯一採択されるなど、省エネ・創エネ活動や環境教育などに力を注いでいる。犬井学長は「大学にはいろいろな建物、組織があり、世界や地域社会の縮図だ。その中でモデルを作ってみて、モデルを地域社会に投影させていくことが大切」と語る。
 学生センターにも、こうしたエコキャンパスの取り組みを導入する。また、大学周辺を流れる伝右川の親水護岸工事とともに建設が進められており、地域社会、環境との共生を重視する大学の方針を反映させたプロジェクトとして注目を集めている。
 親水護岸工事は、犬井学長が所長を務める環境共生研究所が埼玉県に提案し、採択された「埼玉県水辺再生100プラン事業」で、伝右川の対岸にある草加松原団地との交流、生物多様性の増進など魅力ある空間を創出することが目的。伝右川の前面に学生センターを建設しながら、大学、埼玉県、草加市、都市再生機構、地域住民との協働で川辺の再生に取り組んでいる。
 犬井学長は「本学は14年度の創立50周年と、その後の50年を見据え、大学改革とキャンパス再編を進めている。学生センターが、学生のキャンパスライフをより豊かにするとともに、総合的な人間力を養う場として貢献することを願う」と力を込める。

『建築:非線型の出来事―smtからユーロへ』 伊東豊雄建築設計事務所 AmazonLink

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