インドを代表する建築家、ビジョイ・ジェイン氏が率いるスタジオ・ムンバイの展覧会が、東京都港区のTOTOギャラリー・間で始まった=写真。ジェイン氏の指導のもと100人を超える職人が、自然素材や伝統技法を駆使して建築に取り組む「PRAXIS=実践」の過程を紹介している。
スタジオ・ムンバイは、造成から設計、施工に至るまで、建築をほぼ人の手だけで完成させる。
展覧会にあわせて来日したジェイン氏は、会見で「思考と身体、心が統合され、一体化していることが重要。共感する力を大事にしている」と、多くの職人を一つにまとめ、自身の思いを形にするプロセスを紹介した。その上で「職人に指示するのではなく、対話することが大事」と、対等な立場でものづくりに取り組む姿勢を強調した。
また「身体の中に潜む能力に注目している」と述べ、伝統と近代がせめぎ合う領域への興味を示した。
展覧会の準備として、ギャラリー・間の会場と同じスペースをアトリエに再現し、展示品を厳選したという。展示の中には、何に使われるのか分からない道具や部材、建物の一部が並んでいるが、それらすべてから身体性を感じさせる手づくりの温かさが感じられる。ジェイン氏は「エレメントがどのような関係性を持つのかを感じ取り、建物の一部をみることで新しい萌芽を感じてほしい」と説明。
会期は9月22日まで。入場無料。問い合わせは、同ギャラリー・電話03-3402-2541。
]◇日本で初の作品集刊行
スタジオ・ムンバイの活動を収めた日本初の作品集『STUDIO MUMBAI:Praxis』は、住宅を中心に博物館、宿泊施設など12プロジェクトを紹介している。また、ジェイン氏を始め職人や協力者へのインタビューを通して、ものづくりへの姿勢が明らかになる。
特に、協働している建築家の話では、欧米を始め多くの地域で施主、設計者、施工者が相容れない立場にあり、互いに好戦的になるケースが多いことを踏まえ、同スタジオでは「人的な基盤をつくり上げることで、仲介業者である施工業者を排除した」ことで、良好な関係を構築したことを紹介している。
高度に体系化された建築生産システムに対し、原始的でありながらも新たな視点、価値を加えるヒントになる。
(TOTO出版・3360円)
『STUDIO MUMBAI : Praxis』 AmazonLink
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