2012/08/09

建築学会が初めての「デジタルデザイン・コンペ」

建築会館で開かれた審査会
日本建築学会が、2012年技術部門設計競技を開いた=写真。ことしは情報システム技術委員会が主催し、「デジタルデザイン環境によって可能になる建築・都市」をテーマに行った。今回のコンペの特徴は、デジタルデザインを使って、斬新な社会課題を解決することだ。昨今、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)という概念が浸透し、コンピューターの発達とともに、建築機能のアルゴリズムを使った解決も可能となってきた。そこでコンペでは、たとえば内部の空気流動を踏まえた構造や構法によるサステナブル建築や、大規模な自然災害に迅速に対応できる建築デザインなどを募った。

最優秀の「みんチク」
審査は2次方式で行われ、7月17日には1次を突破した6作品についての公開審査会が東京・三田の建築会館で開かれた。
 それぞれの作品について、2次審査に密着して振り返る。
 最優秀は、清水建設の「みんチク(みんなで建築)-ソーシャル・デザイン・プラットフォームによる小学校の再構築-」。
 この提案は、フェイスブックなどのソーシャルサイトを活用して、小学校の改築設計に、実際に建物を使う子どもたちも参加させようというものだ。加えて、小学校内に地域とのつながりを持たせるカフェなどの施設も導入し、長期間、有機的に小学校が姿を変えていく。
 この提案に対し、委員長の加賀有津子阪大教授は、「社会課題に対して真摯(しんし)に対応し、リノベーションにも言及した点を評価する」と講評した。
 優秀賞には3作品が決まった。竹中工務店などの「避難行動の可視化が可能にする新・津波避難計画」と東京芸術大などの「呼吸する空間」と「JUMBLED FA [bric] OLAGE」。
 特に、新・津波避難計画は、一般的なパソコンでマルチエージェント・シミュレーターと呼ばれるソフトを動かし、津波来襲時の避難計画を立案するというものだ。審査会の講評では「社会的命題にきちんとしたシミュレーションが立案された」との評価を得た。
 佳作には、東京電機大グループの「BIOFIED LIVING/ARCHITECTURE/COMMUNITY」と、竹中工務店グループの「Traversal Design for Forming Atmosphere」の2点が選ばれた。
 BIOFIED LIVINGは、熱海をモデルに都市計画と地域ネットワーク、デジタルデザインを融合させた提案だった。
 今回のコンペを通して委員の池田靖史慶応大教授は、「このコンペは3年越しで企画されたもの。デジタルデザインについて交わされた今回の議論だけでも貴重な経験となった。最終審査に残らなかったものにも多くの可能性がある」とまとめた。
 今回の審査結果は、9月に予定されている建築学会大会で展示され、表彰式も行われる。


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