BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)に対する関心が急速に高まる中、導入に影響を持つ設計事務所の動向をみると、積極的な取り組みを見せる事務所もみられるようになってきた。しかし大勢は、導入のメリットを全面的に発揮できる環境にはなっていないとし、「本格導入が始まればすぐに対応できるよう準備はしておく」というのが現状のようだ。
◇本来は品質や工期がメリット
設計初期段階で、コストや工期も勘案しながら施工、運営・維持管理までの各フェーズにおけるさまざまな要素の最適化と総合図・施工図の作成が可能になるところにBIMの真価がある。つまり、BIMの対象は工事費の削減、品質の向上、工期短縮が主となる。
このため、日本建築家協会(JIA)の設計環境改革委員会IPD-WGがまとめた『BIMガイドライン』でも、BIMの入力作業は施工者やサブコンの支援が不可欠としている。さらに最近は、そこに運営や省エネ対策なども見据えたファシリティ・マネジメント・ツールという期待も加わってきているようだ。
また、ほとんどの事務所のトップは、「シミュレーション」「クライアントへのプレゼンテーション」「標準図・構造図・設備図の整合」「品質を高めるためのツール」などの面で、BIMの有効性は認める。
こうしたBIMに対し、積極的に攻めの姿勢で取り組む事務所がある。ただ、BIMでは多くの情報をモデル入力で検討しなければならないため、必然的に検討量が増加する。「消費税より低い」と自嘲気味に語られる低額の設計料の中でBIMを導入することは、利益の圧迫を招くことになりかねない。また、ゼネコン、サブコン、メーカーなどで足並みがそろっていないため、不可欠な支援を受けられないという現実もある。
◇ゼネコンが入れなければ意味がない
このため、大手組織事務所の平均的な評価となると、「ゼネコン・サブコン・メーカーなどが導入していないところで設計事務所だけが導入してもメリットはない」「設計料も設計期間も短くなっている中で、設計事務所だけが負担を負うBIMにメリットはない」「どうしてもBIMでなければならないという積極的な理由が見当たらない」「シミュレーションやプレゼンテーションのツールということなら、BIMでなくてもいいのではないか」ということになるようだ。
とはいえ、急速に関心が高まり、活用の場面が増加してきているのも確か。このため、「いつでも対応できるよう準備はしておく」というのが現在の共通した姿勢だ。そのための組織整備やスタッフ育成、基本設計段階での試行や導入などに取り組んでいる状況にある。
もう一つ注目される流れとして、グループに施工会社や建設資材・機器メーカーなどがあるジェイアール東日本建築設計事務所や日立建設設計が、グループとしてBIM研究を進めている。研究・検討が具体化すれば、グループ内プロジェクトでは、BIMを前提にした設計・監理、施工、維持管理・運営が実現する可能性もありそうだ。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)
0 コメント :
コメントを投稿