2012/03/06

「年間1㍉シーベルトが市町村を苦しめる!」 国の除染対応に福島県伊達市の除染担当者が怒り

除染作業のイメージ
 「国に対して非常に憤りがある」。除染チームを率いる福島県伊達市の放射能対策政策監付次長が、除染現場の声として、「現場を無視した国の規則を押し付けられ困っている。現場を知らない専門家は信用できない」と、除染現場の実態と国の対応に大きなかい離があることを問題視した。同日に開かれた環境放射能除染学会の講演会で現場報告として述べた。

 次長は具体例として、除染作業を行う場合の規則である除染電離則で、除染現場に通常の靴で入る場合、靴カバーをすることが決められていることについて、「冬に国の人間が現場に来てビニールの靴カバーをしたら、雪で滑って歩けなかった」とし、「住民が農作業を行っている近くでタイベックス(防護服)を着て除染作業をすることが、住民をどれだけ不安にさせるか国は分かっていない」と批判。
 また、国が年間1mmシーベルト(1時間当たり0・23マイクロシーベルト)以上の地域の除染方針を打ち出したことで、除染を先駆けて行った学校校庭の空間線量が1時間当たり5・35マイクロシーベルトから0・88マイクロシーベルトに下がっても、住民から「もっと下げろの大合唱が起きている」と説明。
 その上で次長は、「例えは悪いが、いつも赤点の子どもが80点取っても、100点取れと言われている状況と同じ」とし、「ハードルがどんどん上がっていく」ことに不安感を示した。
 また、住民にも放射線や除染の正しい理解が不足していることについて、「住民には除染に対しサイエンス(科学)が通用しないメンタル(感情)がある」とした上で、「住民は国が信用できないと言いながら、(国の除染方針である)0・23だけは信じている。はっきり言ってこの数値が市町村を苦しめている」と本音を吐露した。
 同日の講演会には、除染学会の森田昌敏理事長も参加、今後の課題と学会が取り組むべき考えを披露した。


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