2012/03/22

丹青社がこだわった『ONE PIECE』展覧会 展示のプロに聞く!

 コミックスの累計発行部数2億6000万部以上という大人気漫画『ONE PIECE』の初めての展覧会が、東京都港区の森アーツセンターギャラリーで始まった。島々を巡る冒険や仲間との友情など、大人ものめり込む漫画の世界観が、丹青社の空間構成技術によって3次元の展覧会に表現されている。限られたスペースの中、入り口から出口までをひとつなぎの冒険譚として構成した同社の担当者に、さまざまな要素を盛り込んだ展示のポイントを聞いた。

◇世界観・制作現場をシェア

 展覧会は原画にこだわり、読者、ファンだけでなくすべての来場者が漫画のコマに入り込めるような空間づくりを心掛けた。単に原画を展示するギャラリーではなく、アトラクション、テーマパーク、ミュージアムの要素も取り入れた複合化された展覧会となっている。
 「ワンピースには『冒険』や『仲間』などいくつかのキーワードがある。その世界をコンセプトとして展覧会をどのように形づくっていくのかがポイントだった」と丹青社のプリンシパルクリエイティブディレクター・洪恒夫氏は、漫画の世界を展示空間に落とし込み、奥行きを持たせた。
 その一つが、展示のマインドストーリーと呼ぶシナリオの設定だ。プロダクションデザイン部1課のデザイナー・吉田真司氏は「入り口から出口まで、どのような気持ちでワンピースの世界に浸ってもらうかをゾーンごとに設定し、展示内容に落とし込んだ」。連載開始から15年間の壮大な冒険物語と同様に、展覧会としてのストーリーラインを設定し、来場者の感情を想定して展示を組み立てた。
 漫画では、最初の3ページが読者を引きつける“つかみ”になるという。「展覧会でも、来場者の心をグッとつかむような映像シアターを用意した。ただの映像ではなく、ここでも原画にこだわった」と、クリエイティブマネジメント室のプランナー・石田裕美氏は、3Dのようで3Dではない「冒険パノラマシアター」の出来栄えに自信をみせる。
 展示室から展示室への移動は、海賊船で島から島へと航海をしているかのような演出。「展示空間を島に見立て、大きなうねりをつくっている。物語の盛り上がりを追体験できるように心掛けた」(洪氏)。

◇身体で読む漫画を再現

 昔からワンピースの大ファンだという吉田氏は「漫画はスピード感があり、読んでいるだけなのに音まで聞こえてくるようで、いつの間にか入り込んでしまう。身体で読む漫画が表現できないかという視点で、漫画のコマが浮遊しているような展示空間をつくった」と、こだわった部分を説明する。
 会場は、ビル中心部を囲むコの字の形状。展示がどんどん充実していく中で、床面積の制限はネックだった。「普段の展示では使わない場所も使った」と石田氏。また、作者の尾田栄一郎氏からは「ホスピタリティーを一番大事にしてほしい」と言われていたため、来場者が余裕を持って観覧できるような動線計画を立てた。「人は大勢来るが、会場は細長い。そのような制約の中でも集団体験をしてもらえるように工夫を凝らした」(石田氏)。
 展覧会全体のキーワードはシェア(分かち合い)。仲間との集団体験で世界観を分かち合うほか、漫画の制作現場を再現して作者の創作活動に触れ、気分をシェアできる展示も用意している。洪氏は「分かち合いということに、初期段階から徹底的にこだわってきた」と力を込める。
 「尾田栄一郎監修 ONE PIECE展~原画×映像×体感のワンピース」六本木ヒルズ森タワー52階・森アーツセンターギャラリーで6月17日まで(午前10時-午後10時)。チケットは日時指定の前売制(入館時間は1日6回。販売状況により当日券販売)。主催は朝日新聞社、集英社など。


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