2012/03/18

「設計・施工分離でもBIMデータを連携させる」 日建設計と竹中工務店の挑戦!北里大の新病院プロジェクト

新病院で導入したBIM
 北里大学病院が相模原市に建設中の新病院プロジェクトでは、設計者の日建設計と施工者の竹中工務店がシームレスにデータ連携するBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)に挑んでいる。両社にとっては設計と施工の分離発注による一貫したデータ連携の先行事例でもある。実施設計段階には3次元モデルを使い、協力会社を交えた詳細な設備の施工検証も実現した。BIMの導入には「施工時の手戻りを少しでも軽減させたい」という設計サイドの思いがあった。

 同病院はチーム医療制を敷くなど運営面の新たな試みに挑むこともあり、今後は工事進捗に合わせて多くの変更要求が出てくることが予想される。新病院『北里大学病院スマート・エコホスピタルプロジェクト(仮称)』は病床数783床と大規模で、しかも建物の低層部と高層部で運営機能も異なる。
 設計担当の藤記真日建設計設計部門副代表は「当初、社内からは病院建築でBIMを本格導入することは無謀との意見も上がっていた」と明かす。それでも導入に踏み切ったのは「従来の2次元設計のハンドリングでは限界があり、施主との合意形成にも3次元モデルデータを駆使した見える化が欠かせない」と考えたからだ。「何より機能が複雑ゆえに今後多発するであろう工事の手戻りを軽減したい思いもあった」

◇はじめの一歩

 実施設計に着手したのは2011年2月。基本設計後の工事発注だったこともあり、竹中工務店が協力する形で進めてきた。3次元の基本設計データをベースに意匠、構造、設備それぞれの実施設計を3次元で仕上げ、それらを1つにした統合モデルも構築した。特に意匠設計では変更があった場合に50分の1、150分の1、250分の1の各縮尺図面に加え、一般図、詳細図、鳥瞰図のすべてが連動するデータ環境をつくり上げた。
 支援役として実施設計時のBIM対応に携わった森元一竹中工務店東京本店設計部プロダクト設計部門設計担当課長は「統合モデルを軸に設計変更も3次元データで対応する予定だったが、データ量や操作性の点から、3次元モデルを下敷きに判断し、実際には2次元データで変更作業を行うことにした。これだけの規模のBIM導入は当社でも初の試み。将来を見据えた“はじめの一歩”になる」と確信している。

◇設備協力会社も参加

 実施設計では設備の協力会社も参加させ、干渉部分の洗い出しに時間を費やした。新病院の低層部は診療・スタッフエリア、高層部は病棟エリアで構成。谷村充男竹中工務店横浜支店作業所設備担当課長は「低層と高層の切り替え階は平面図と断面図で把握できないほど設備と構造が密接に入り組んでおり、事前検証に3次元の活用が欠かせなかった」と強調する。設備工事を担当する東洋熱工業、きんでんも柔軟に対応。配管だけではなく、通常では行わないケーブルの敷設状況も3次元で表現した。
 実は、設計者の藤記氏にとって本格的なBIMは今回が初めて。施主との打ち合わせにはBIMモデルを使い、内外観の詳細なパースを提示し、空間の細部まで幅広く意見を聞いている。11年8月末の起工式には5分間のフルアニメーションも披露した。「プロジェクト全体を通じてBIMの効果を最大限に発揮するには施工者、そして協力会社の参加が欠かせない。設計段階に施工時の負担軽減を押し進めてきたのも、現場全体の共通認識が高まれば、結果として施主のためになると考えている」からだ。
 この現場を統括する竹中工務店の細田英一作業所長は、こう感じている。「実施設計段階に詳細な施工検証が行えたのは今後の現場運営にとって実に大きい。まだ工事は始まったばかりだが、万全な事前準備を整えることができたことは明らか。手戻りの軽減は、運営上の大きなメリットであり、それによって現場は一体的に動ける」。BIMの導入により設計者と施工者の共通意識は、確実に芽生えている。

◇北里大学病院スマート・エコホスピタルプロジェクト(仮称)

▽建設地=相模原市南区北里1-15-1▽発注者=北里大学病院▽基本設計=日建設計▽実施設計=日建設計、竹中工務店▽施工=竹中工務店▽規模=RC・SRC造地下1階地上13階建て延べ約8万4,500㎡▽工期=2011年9月-13年12月▽使用ソフトウエア=意匠はRevit(オートデスク)、干渉チェックはNavisworks(同)、設備はCADWe’ll Tfas(ダイテック)、総合図はAutoCAD(オートデスク)、J-BIM CAD(福井コンピュータ)


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