東日本大震災で被災した14地域の“在りし日の姿”を500分の1スケールの模型で復元展示する追悼展覧会「失われた街」が4月7日まで、名古屋市千種区の名古屋市立大学北千種キャンパスで開かれている=写真。20日には建築家の内藤廣氏ら有識者を招いてシンポジウムも開かれ、震災後の街づくりのあり方を探った。
名古屋市立大准教授で建築家の久野紀光氏が企画し、同大大学院芸術工学研究科環境デザイン研究所が主催した。総合資格学院(岸隆司学院長)が協賛している。
展示模型は、岩手県の釜石市や陸前高田市など津波被害が甚大な東北地方の14地域の震災前の姿を精巧に復元したもの。全国14大学の学生がボランティアで制作し、昨年11月に東京都港区のTOTOギャラリー・間で開かれた展覧会に出品された。
20日のシンポジウムには、内藤氏と久野氏、槻橋修氏(神戸大准教授)、小林博人氏(慶応大准教授)ら建築家と、被災地で復興支援に取り組んだ坂下透氏(釜石トライアスロン協会)、山内宏泰氏(リアス・アーク美術館学芸員 学芸係長)、工藤雅教氏(Civic Forceプログラムコーディネーター)、難波伸治氏(名古屋市消防局防災部防災室主幹)ら有識者が、被災地での活動報告や復興のあり方について意見を交わした。
「生と命の街へ」をテーマにした意見交換では、被災地で復興活動に従事した坂下氏や山内氏がそれぞれの体験を報告。山内氏は被災地を訪れる“文化人”らの無神経な振る舞いにも言及、「カラーセラピーをしたいから孤児を紹介してくれ」との申し出があったことに憤りさえ感じたとした。
内藤氏は、「セラピストの話はそのまま『建築家』に置き換えられる」とし、持説を押しつけるような行為は慎むなど「建築家はもっと『大人』にならなければならない」とした。さらに高台移転を含めた三陸沿岸の街づくりについては、住民の意思が重視されるため「明治以来、今が一番『自治』というものが問われている」とした。また、現在の災害対応が、地震と津波に偏ったものになっているとも指摘。「災害は思ってもいないところから起こる」とし、大学施設でのケミカルハザードなど、今後起こり得る災害の可能性を広く考えることが必要だと提起した。
参加した学生から飛びだした「震災対応に建築家の職能は必要か」との質問に対し、内藤氏は、地元との信頼を築いてからの活動が大事だと述べた上で、復興には「日本中の建築家をかき集めても足りないくらいやらなければならない仕事はあるだろう」と話した。
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