2012/03/02

「住む人不在」の戦後住宅政策を批判 山本理顕氏が福岡市で講演

 福岡県美しいまちづくり建築賞の特別講演、受賞作品発表会が2月28日、福岡市のソラリア西鉄ホテルで開かれ、多くの建築関係者や学生らが参加した。特別講演では、建築家の山本理顕氏が「地域社会圏主義~住まいを変えれば、日本が変わる」をテーマに講演した=写真。山本氏は、「戦後日本の住宅政策は経済成長のための施策で住む人のことを考えていない」と批判し、その政策に基づいて供給された住宅は、「プライバシーとセキュリティーという概念のみで構築され、『1住宅=1家族』のシステムを根づかせた」と指摘した。

 そのシステムは、「高齢化社会を迎えたいま、完全に破たんしており、住宅のつくり方を変えることで社会を変えていくことが必要だ」とし、地域社会圏の考え方を紹介した。

◇インフラまで考えるのは建築家

 具体的には、一辺2・4mのキューブを積み上げて居住空間を構築し、共有部分を多く設けることで500人単位でも相互扶助の関係が成立するコミュニティーを提案した。エネルギーや交通インフラのあり方も提案しており、「これらを一緒に考えられるのは建築家だけ。われわれには大きな責任がある」と語った。
 この後、第24回美しいまちづくり建築賞の大賞受賞作の発表会が開かれ、まず、住宅の部大賞の「むさしヶ丘の住宅」で設計を担当したエヌ・ケイ・エスアーキテクツの末廣香織、末廣宣子の両氏が、四方を道路に囲まれた敷地でプライバシーを確保しながらまちとの関係を生み出すことをテーマに取り組んだことなどを紹介した。さらに、木造建築の課題や可能性にも踏み込み、材料や構造、デザインを総合した取り組みの必要性などを指摘した。
 一般建築の部大賞の「築上町火葬場」の設計を担当したアール・アイ・エー九州支社の栗原英夫氏、小塚真太郎氏は、シンプルな平面計画の中で、周辺の自然環境、立地環境を読み取りながら、火葬場という静かで穏やかな空間を造りあげた過程を解説した。完成から約2年が経過した現在、発注者の要望でもある「火葬場のイメージを一掃することに近づけた」と話した。


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