今泉絵里花さん(東北大)の『神々の遊舞』 |
卒業設計日本一決定戦は、仙台を中心に建築を学ぶ学生有志でつくる仙台建築都市学生会議が03年から開催。10回目となる今回は全国の大学と専門学校あわせて109校から631点の応募登録があり、作品提出は450点だった。
3日にせんだいメディアテークで行われた予選審査では、小野田泰明東北大大学院教授ら仙台建築学生会議アドバイザー10人の投票などで、セミファイナル進出作品101作品を選出。4日に開いた10周年イベント「前夜祭プレゼンテーション大会」を挟んで、5日午前中に行われたセミファイナルでは、ファイナル審査員も加わり投票と協議で上位10作品を選定した。
川内萩ホールに会場を移して行われたファイナル審査のメンバーは、委員長の伊東豊雄氏(伊東豊雄建築設計事務所)、塚本由晴氏(アトリエ・ワン、東工大大学院准教授)、重松象平氏(OMA)、大西麻貴氏(大西麻貴+百田有希)、櫻井一弥氏(SOYsource建築設計事務所、東北学院大准教授)の5人。
日本一を決める議論では、ファイナル10作品の中に震災関連4作品、中国人留学生2作品が残り、震災とグローバリゼーションを中心に議論が進む中、伊東氏が「東日本大震災以降、建築にはリアリティーと思想の切実性が必要だと考えている」と強調。大西氏は「切実さと誠意のある作品が響く」とし、櫻井氏も「震災をテーマとする作品は、リアリティーのあるものしか残っていない」と、この意見に同調した。
当日の様子 |
◇普遍性と公共性が評価
重松氏は「いま建築家には、ストーリーをつくり提案するという建築家の職能が試されている。震災感情を抜きにしても、説得力と設計者としての責任感ある作品を推したい」と語った。
塚本氏は、伊東氏と同じ作品を推しつつ「伊東さんが震災以降に話している“建築家は変わらなければいけない”という話はシンボリック過ぎる。以前の卒業設計にも地道で誠実な取り組みはあった」とした上で、「今泉さんの無形の祭りを通して建築空間を組み立てていくという提案には普遍性と公共性がある」とし、満場一致で今泉さんの作品が日本一に決まった。
『神々の遊舞』は、津波被災地の宮城県石巻市雄勝地区大浜の無形重要文化財・雄勝法印神楽を行う舞台装置を提案。移転先となる山と非可住エリアの浜をつなぐ空間に長さ382mの水平の板を渡し、その中に地域の伝統的な木造建築の舞台を取り込むことで、600年間続く地域の行事を引き継ぎつつ、人々の交流空間の創出を提示した。
講評の中で伊東氏は、「人が集まる場所を自然な形で表現できている。地元の人が喜ぶという、わたしが『みんなの家』でやりたかったことにつながる」と高く評価した。 このほか、奨励賞には塩原裕樹さん(大阪市立大)の『VITA-LEVEE』、張昊さん(筑波大)の『インサイドスペースオブキャッスルシティ』、西倉美祝さん(東大)の『明日の世界都市』の3点が選ばれた。
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