東日本大震災で笠石がずれる被害が生じた靖国神社(東京都千代田区)の「大灯籠」を免震化する工事が、清水建設の施工で大詰めを迎えている。総重量26tの笠石の下に免震層を設けるほか、台座部の鉄筋補強で灯籠全体の構造強度を6倍に引き上げる。15日に南側の笠石の据え付けが完了、16日には北側の残り1基を行う。震災から1年が経過し、3月末には12m以上という高さ日本一の大灯籠が久々にお目見えする。
靖国神社では震度5弱の揺れが襲った。大灯籠の笠石は長時間の揺れで波打つような状態となり、一部が欠け落ちる被害が出た。現在の工事長を務める谷敏光氏は同僚を連れ、その日のうちに損傷状態を確認。翌日には社内にプロジェクトチームをつくり、復旧の対策を練った。
1935年に竣工した大灯籠は高さは12・4m、基礎部径は7・2m。先端部の笠石は高さ3・1m、幅は3・5mで26tの重さ。日本を代表する建築史家の伊東忠太が設計し、当時作成された設計図面や構造計算書も大切に保管されていた。
図面では鉄骨心材で笠石が固定された記載があった。谷工事長は「電磁波レーダーや超音波の検査によって、実際には心材の上に載っていた状態であったため、長時間の揺れで波打つ現象が起きたことをつかんだ」と原因を明かし、その対策として新たに心材を設置した上で笠石との間に、免震層を組み入れるプランを採用した。
◇震度7でも大丈夫
プロジェクトチームのメンバーで設計本部構造設計部4部の木村誠設計長は「頭が極端に重い構造であるため、長時間の揺れによって、軸部足元に引き倒す力が加わり、そこへの補強対策も必要と判断した」と説明する。具体的には台座を囲むように長さ3m強、径38mmの鉄筋を8カ所打ち込む対策も講じた。高さ12mもの灯籠を免震化するのは極めてまれで、装置はオイレス工業に滑り振り子形式を特注し、笠石下に3カ所据え付ける計画とした。
同社によると、震度7程度の地震に遭遇しても灯籠の損壊や笠石の落下も防げる。設計周期は4秒で、震度5程度の揺れでは振り幅数cm、極めて大きい地震でも30-40cmとなり、揺れが収まった後は中心の位置に戻る。免震効果で揺れは10分の1に低減、足元への負担は従来より3分の1に軽減され、「鉄筋補強も含めると、灯籠全体の構造強度は6倍に達する」(谷工事長)と試算。工事は3月28日に完了予定。15日に報道陣に公開された笠石の据え付け作業は微風の中で、1時間半程度で完了した。
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