2012/03/31

ディプコレ(東海地区卒業設計展) 最優秀賞に滋賀県立大の井上さん-解体前の百貨店に仮設建築

『消えるビル-はかない都市を演出する-』
 東海地区の大学で建築を学ぶ学生団体が企画・運営する、第9回建築卒業設計展「DIPCOLLE(ディプコレ)」が24、25の両日、名古屋市中区のアートラボあいちで開かれた。「未来の建築はこんなにたのしい」をテーマに掲げ、会場内に70作品を展示。建築家による公開審査を経て、最優秀賞には、解体前の阪神百貨店(大阪・梅田駅前)に仮設建築を設ける『消えるビル-はかない都市を演出する-』を作成した井上悠紀さん(滋賀県立大)が選ばれた。

井上さん
  ディプコレは、東海地区の大学4年生の卒業設計を中心に展示する催し。出身地が東海地区であったり、東海地区を敷地とした作品であれば他地区の大学生も出展できる。「学生による、学生のための卒業設計展」を基本理念とし、学生自身が運営を始めて今回が5回目となる。総合資格学院(岸隆司学院長)などが協賛している。
 今回の審査員には建築家の井手健一郎氏、藤村龍至氏(藤村龍至建築設計事務所代表)、藤原徹平氏、間宮晨一千氏(間宮晨一千デザインスタジオ代表)の4人を迎えた。
 25日には公開審査で7作品に絞り込んだ上、学生によるプレゼンテーションや審査員との質疑を実施。上位3作品と特別賞を選んだ。
 最優秀に選ばれた井上さんの作品は、建て替えが計画される阪神百貨店を題材としたもの。解体直前の2年間の期間限定で、建物外部をめぐることができる仮設建築を提案した。井上さんは、この仮設建築によってビルでは「お祭り」が起こり、解体時には「楽しかったビルの最期が『都市の記憶』として残っていく」とした。
 2位に選ばれた神永侑子さん(愛知工業大)の『記憶のギャラリー 心象風景と、建築が亡くなるということ。』は、廃虚が増える過疎地域を舞台に、記憶豊かな未来とするための建築風景のあり方を提案。3位の田中脩造さん(名古屋市立大)の『伊勢外宮門前町の再生』は、空き地などの空洞化が問題となっている三重県伊勢市で、伊勢神宮を参考にした「土地利用」と「知恵」のサイクルを活用したまちの再生を提案した。このほか特別賞として、木村陽子さん(名古屋工業大)の『1/2のマチと底なし沼』が選ばれた。
 25日の最終審査に先立ちあいさつした、総合資格学院名古屋校の坂野文俊校長は「卒業設計は学生生活の集大成。きょうは皆さん1日ドキドキの場だったと思う」と学生たちに呼び掛けるとともに、社会に出てからも安全・安心な設計に取り組んでほしいと期待を寄せた。


『卒業設計コンセプトメイキング』 AmazonLink

Related Posts:

  • 【坂本龍馬記念館】新館は「蔵」をイメージ リニューアルの基本設計が明らかに 高知県は、坂本龍馬記念館リニューアルの基本設計を公表した。既存館は「日本から世界へ羽ばたく龍馬の精神」、新館は「蔵」をイメージし、「新たな時代の幕開けが迫る幕末の日本」をそれぞれ外観デザインの考え方とした。基本設計は、建築を石本建築事務所・ワークステーション・若竹まちづくり研究所JV、展示を丹青社がそれぞれ担当、実施設計も引き続き委託する方針だ。2015年度内に実施設計を進め、16年度の着工、17年度内の開館を目指す。画像は外観パース(左側… Read More
  • 【伊東豊雄】「ぎふメディアコスモス」7/18オープン 伊東氏と益川名誉館長らで座談会開催 岐阜市が事業主体として、岐阜大医学部跡地で建設を進めていた図書館複合施設「みんなの森 ぎふメディアコスモス」が概成し、2日に益川敏英名誉館長(名大特別教授)が現地を見学=写真、記者会見を開いた。益川名誉館長は「うねるような屋根に設計者の意気込みを感じる」と第一印象を語った。  規模はRC一部S・木造2階建て延べ1万5313㎡。所在地は、岐阜市司町40-5の一部。設計は伊東豊雄建築設計事務所、建築施工は戸田建設・大日本土木・市川工務店・雛屋建… Read More
  • 【建築】「鎌倉こころのギャラリー館」オープン 暮らし・文化・芸術を一体に 古都・鎌倉長谷で文化をともに楽しむ棲家「鎌倉こころのギャラリー館」が完成した=写真。この竣工を祝い、4月28日に建設地の神奈川県鎌倉市長谷2-12-17で前夜祭が開かれた。設計はジェイ石田アソシエイツ(横浜市南区、ジェイ・石田代表)、施工はマスノが担当。シェアハウスとギャラリーなどが一体となった同施設は暮らしと文化・芸術を融合した「心の通う暮らしづくり」を目指す。  前夜祭で石田代表は、貼り絵画家・内田正泰画伯との出会い、常設展示施設設置に… Read More
  • 【高尾山】動植物の息づかいが聞こえる… 「高尾599ミュージアム」8/11オープン!!  好奇心の入り口へ、ようこそ--。年間300万人の観光客が訪れ国内外から注目される高尾山の麓に、東京都八王子市が整備を進めていた複合施設「高尾599ミュージアム」が完成し、11日にオープンする。博物館や交流機能を持った高尾山の魅力を発信する観光施設で、展示物と映像・音楽を融合させた最新技術、プロジェクトションマッピングを導入し、自然の宝庫に生息する動物の息づかいを感じることができる。実施設計は東畑建築事務所が担当。建築は三友建設(同市)が施工… Read More
  • 【京都鉄道博物館】最大級の「鉄道文化拠点」、整備着々! オープンは16年4月29日  西日本旅客鉄道(JR西日本)は1日、2016年4月29日にオープンする京都鉄道博物館の整備状況を報道向けに公開した。日本の近代化をけん引した貴重な車両53両を展示するほか、体験学習スペースなども設ける全国最大級の「鉄道文化拠点」の完成に向け、工事を着々と進めている。設計施工は大成建設が担当している。  JR西日本広報部京都鉄道博物館開業準備室の飯田稔督室長は「来客の想定はファミリーが中心。鉄道の歴史をぜひ体感してほしい」と話しており、初… Read More

0 コメント :

コメントを投稿