東洋建設は、湖沼や河川の水底(水域底質)に堆積した放射性物質を回収・除去する除染システムを開発した。有機物分離や高性能凝集剤の処理工程を組み込み、セシウム除去効果を高めた。処理後の濃度は土砂で89%の低減、排出水は飲料水の新基準値である10ベクレル以下まで引き下げることを確認。4月には実機による試験運転を開始する予定だ。
システムは、同社が培ってきた高濃度薄層浚渫技術や分級脱水処理技術、水質浄化技術をベースにしており、組立式台船に搭載した底質回収装置と、湖沼や河川などの沿岸に設置するセシウム除去プラントで構成している。
水底はシルトや粘土、有機物が多くあり、セシウムが強く吸着している。これまでの洗浄分級、凝集沈殿、脱水の各処理工程に加え、有機物分離などの工程を組み込んだ。また、回収土量を最小限に抑えつつ、セシウム残存の要因となる植生帯や植物根を確実に除去できるように、バケットや吸引方法にも改良を加えた。
同社は原土が高濃度であることから、有機物分離工程を改良することでセシウム残存濃度をさらに減少させることが可能とも考えている。今後の実証実験ではシルト粘土分の分級性能を高め、減容効果も検証する。
現在は、福島県内の湖沼で兵庫県立工業技術センターと共同で実証試験を行っている。土壌におけるセシウム吸着のメカニズムは解明されているものの、水底は分布状態も含めて未解明の部分が多い。同社は水域内でホットスポットが形成されているとの調査報告もあることから、システムの効率化をさらに推進する方針だ。
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