2017/02/19

【建築】駒沢通りと恵比寿公園つなぐ「新たな風景」 季節感じる開かれた空間・恵比寿SAビル


 交通量の多い大通りと子どもたちの歓声が響く公園とに大きく開かれた空間が、周囲の風や緑、季節の移ろいを感じさせながら多様なアクティビティを受容していく。駒沢通りと恵比寿公園にはさまれた東京・恵比寿の都心部に、教会と住宅、テナントオフィスからなる複合施設「恵比寿SAビル」が竣工した。設計を担当したシーラカンスアンドアソシエイツ(CAt)代表の赤松佳珠子氏は「できるだけ自然の緑や風、光が感じられる空間にしたいと考えた」と語る。写真は北面外観(見上げ)。商業地域内に影のラインを収めるためにボリュームを切り取った

 近年、テナントビルの建替えが増えている駒沢通りでの「新たな風景をつくり出すきっかけとなる建築のあり方を目指した」とも話す、このビル。
 駒沢通りに面した南面ファサードは、鉄骨フレームを組んで壁面緑化を施す一方、ボリュームを削り取るようにくぼませた中層階の上部にオフィス部分を大きくオーバーハングさせた公園側の北面外観がインパクトを与える。
 恵比寿公園と敷地の間に商業地域と住居地域の境界線があり、日影規制をクリアしながら上階での最大床面積を確保するために導かれた形態といえる。

1階「第2ホール」。通りと公園の間にある約1.2mの高低差を生かした
階段状のアッセンブリースペースは子どもたちの遊びや
活動の場として使われる

 1、2階は施主である救世軍の教会施設となる。2階の礼拝堂は、日影規制がもたらした台形の平面形状と大きく張り出したテラスによって公園と一体化。1階の「第2ホール」と呼ばれるスペースは、礼拝後の食事やミーティング、勉強会のほか、イベントやバザーを行う開放的な空間で、駒沢通りからこうした活動が見え、その活動越しに公園が見えるような設計としている。

公園側に開かれた礼拝堂

 「普段は後ろに公園があることを意識していない駒沢通り側に、公園がより近くに感じられるようにしたい」というように、駒沢通り側の折戸と公園側の引き戸を開け放つと人や空気の動きまでが感じられる。

壁面緑化した駒沢通り側ファサード

 5階より上階のテナントオフィス部分はスケルトンでの賃貸を基本とし、入居者による内装工事を前提としたリーシング方法を提案。オフィスフロアにも公園側に一段挙げたベンチや縁側のようなバルコニーを設けており、季候の良い季節には折戸を全開放することで公園と一体となったオフィス空間となる。

8階テナントオフィスフロア。敷地周辺にはデザイン系のショップやアトリエが
多いため「つくり込まないオフィス」とした

 もともとCAtが入居していた救世軍渋谷ビルの建替えプロジェクトであり、昨年10月に急逝した共同代表の小嶋一浩氏も「戻ってくるのを楽しみにしていた」という、このビルの5階で3月上旬、CAtが再び業務を開始する予定だ。

〈建築概要〉
▽工事名称=(仮称)救世軍新渋谷ビル新築工事
▽所在地=東京都渋谷区恵比寿西1-20-5
▽用途=(1-4階)教会、(4階)住宅、(5-10階)オフィス
▽構造・規模=S造10階建て
▽敷地面積=295.74㎡
▽建築面積=256.52㎡
▽延べ床面積=1950.9㎡
▽設計期間=2013年12月-15年10月
▽施工期間=15年11月-17年2月
▽施工=藤木工務店
〈設計〉
▽意匠=小嶋一浩+赤松佳珠子/CAt
▽構造=オーク構造設計
▽電気=EOS plus
▽機械=知久設備計画研究所
▽照明(1-2階、外部)=岡安泉照明設計事務所
▽テキスタイル=安東陽子デザイン
▽家具=藤森泰司アトリエ
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