2017/02/18

【建築】学生と周辺住民が共生する空間 槇文彦氏設計の東京千住キャンパス新校舎


 東京電機大学が東京都足立区に整備していた東京千住キャンパスの新校舎(5号館)が竣工した。設計した建築家の槇文彦氏は「地域に開かれたキャンパス」を実現できたと力強く語る。

 5号館は東京千住キャンパス整備計画の第2期工事で、教室、実験・実習室、学生ラウンジのほか市民が通り抜けできる吹き抜け空間や会員制スポーツジム、学習支援施設、保育所など市民向けの機能を整備した。「ものづくり」に必要な実践的な技術を習得できる3層吹き抜けの「ものづくりセンター」では、近隣児童向け理科教室の開催なども予定している。
 近年流行する「シェアリングエコノミー」の先には「建築も空間をどうシェアするかが大事な問題になる」と見据え、周辺住民との共生を重視したという。第1期工事ではキャンパス周辺の広場や街路と接続し、学生や周辺住民が自由に時間を過ごす環境を整えた。続く5号館では新たに学習塾やスポーツジムなども整備。市民向けの機能がさらに充実したことで、「ここで楽しむ親子がいまから想像できる」と期待を寄せる。
 槇氏が強く印象に残っているのは、近隣の保育園に通う園児が遊びに広場を訪れるのを見たことだという。「海外でもこうした子どもが遊びに来る大学キャンパスは少ない。海外の講演会などでこの事例を紹介すると非常に大きな反応がある」とも。

吹き抜けアトリウムの制震ダンパー

 地域の拠点を目指し、防災性向上にも力を注いだ。吹き抜けのアトリウムには制震ダンパーを配置し、地震や暴風雨など大小の揺れに対応している。構造・設備設計を担当した日建設計の平石譲取締役常務執行役員クライアントリレーション部門副統括は、「大きな災害時にはこのキャンパスが地域の防災拠点となることを期待している」と強調する。また、アトリウムに隣接して蓄熱槽を整備し省エネルギー性能も高めた。「省CO2技術のトップリーダーたる東京電機大学にふさわしい、次の100年にわたってさらに発展する施設になった」と自負を込めて語る。
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