2017/01/13

【記者座談会】17年度予算案 当初予算案にゼロ国債を初めて設定

A 20日開会の通常国会に提出する2017年度予算案は。
  写真は約1200人が集った1月5日の建設業関係11団体2017年新春賀詞交歓会

B 一般会計の総額は前年度比0.8%(7329億円)増の97兆4547億円で、5年連続して過去最大を更新する。公共事業関係費は、0.04%増の5兆9763億円となった。5年連続で増えるものの、増加額は3年連続して26億円と同額で、小幅にとどまっている。
C 予算案は、国土交通省関係予算案に約1400億円のゼロ国債を設定したことがポイントだ。当初予算でのゼロ国債設定は初めて。従来からの2カ年国債と合わせ、約3000億円規模での公共工事施工時期平準化への対応になる。
D 公共工事の特性である閑散期の年度当初と繁忙期の年度末の繁閑の波を小さくするだけでなく、当たり前とされる予算の単年度主義を改めることにもつながっていく。また、年間を通じた安定的な仕事量を確保する施工時期の平準化は、安倍政権が掲げる「1億総活躍社会」の実現に向け、担い手確保や生産性向上を包含した働き方改革にも通じる取り組みといえる。
B 安倍晋三首相が4日の年頭記者会見で「最大の経済対策は来年度予算の早期成立」と言っているように、年度当初から公共事業が順当に動いていくことは、平準化とともに適正な工期の確保にとっても重要になる。
C 公共事業関係費予算案の内容をみると、防災・減災対策の推進や日本の成長力強化につながる事業に重点を置いたといえる。具体的には、自治体のインフラ整備や老朽化対策を財政支援する社会資本整備総合交付金に8940億円、防災・安全交付金に1兆1057億円をそれぞれ計上した。成長力強化に向けた3大都市圏の環状道路や空港・港湾へのアクセス道路整備は2529億円を配分、整備新幹線には755億円を充て、北陸新幹線金沢~敦賀間に重点配分している。
D 府省ごとの公共事業関係費は、国土交通省が前年度比20億円増の5兆1807億円、農林水産省が72億円増の6833億円、厚生労働省が18億円減の189億円、経済産業省が2億円減の22億円、環境省が30億円減の484億円、内閣府が15億円減の426億円となった。ただ、水道施設や廃棄物処理施設などの整備費は本来、公共事業関係費で賄うが、同関係費だけでは自治体が要望した予算額が確保できない状況が続いている。このため、一般会計の非公共事業費やエネルギー対策特別会計などにも予算を計上して何とか予算額を確保した。
A 建築分野の整備費は非公共事業費の「その他施設費」に計上されることから、一般会計の17年度公共事業予算規模は7兆円程度になるということかな。ところで、地域の建設企業が注目する自治体の17年度予算案の見通しは。
B 自治体の予算編成に向け目安として作成した17年度の地方財政計画によると、通常収支分の規模は前年度比1.0%増の86兆6100億円程度だ。通常収支分のうち、公共事業費に相当する「投資的経費」は、1.4%増の11兆3600億円。自治体の建設関係予算歳出規模を判断するのに重要なもう1つの「維持補修費」は、3.5%増の1兆2600億円を見込む。通常収支分は16年度と比べ約1900億円増える。
C ただ、東日本大震災分は、前年度から3割程度減り、復旧・復興事業が1兆2800億円、全国防災事業が947億円となる。このため、17年度の自治体全体の公共事業関係分野歳出見込み総額は、約14兆円になるとみられる。
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