2016/12/16

【記者座談会】“新しい街”晴海埠頭の選手村が17年1月に着工 五輪後の活用に課題


A 2020年東京五輪・パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場の起工式が11日に開かれたね。

B 安倍首相が白紙撤回した旧計画では昨年10月に着工予定だったので、1年2カ月遅れてのスタートだ。大成建設・梓設計・隈研吾建築都市設計事務所JVが設計と施工を担当し、工期は約3年。大成建設の山内隆司会長は、起工式のあいさつで「限られた期間内で大規模なスタジアムを整備するという国内でも過去に例がない難しいプロジェクト」と強調し、「設計・施工・工事監理を一貫して実施する利点を生かし、持てる技術と英知を結集し新技術を駆使、工期内に完成させる」との決意を語った。
A 今後、工期内の完成は大命題だが、具体的な工事工程はどうなっているの。
C これまでは、旧競技場関連施設地下躯体取り壊しなどの準備工事を進めてきた。12月からは本体工事に移り、具体的には山留め・掘削工事が始まった。現時点のスケジュールでは、来年4月から地下工事に入る予定だ。地上工事は8月を予定しているので、地上躯体が見えてくるのは来年の夏以降だろう。木材と鉄骨を組み合わせた部材をトラスに採用した特徴的な大屋根の工事は、18年2月ごろになると聞いている。並行して、木に包まれた内部空間など内装仕上げ工事に入り、さらに躯体工事の完了後、18年4月からは外装仕上げ工事が進むだろう。新たなスポーツの聖地は、19年11月の完成を目指している。
A 五輪後の運営などは。
B 五輪後の運営や管理も課題だ。国は民間への移行も視野に入れている。文部科学省や内閣官房、日本スポーツ振興センター、東京都でつくる作業チームが大会後のスタジアムの活用のあり方などを検討している。
A 五輪関連ではこのほか、晴海埠頭(東京都中央区)の選手村プロジェクトも1月の着工を予定している。5街区23棟総延べ約70万㎡、約5600戸の住宅を建設する。都心区の住宅開発としては最大級の規模だろう。
D 特定建築者の三井不動産レジデンシャルなどディベロッパーのグループは、まず五輪までに選手村となる約4000戸を整備する。五輪後はそれらを改修した上で、2棟のタワーマンション建設に着手する。全体完成は24年度を予定している。約18haの大規模な面的開発でもあり、東京都は540億円を投じて幹線街路や区画道路などの整備を進める。
C 大型プロジェクトなどで「新しい街が誕生」といった表現をよく耳にするが、晴海に関しては誇大表現ではなさそうだ。
E 周辺のマンション市場に与えるインパクトも大きいとみられる。臨海部は既にマンションが林立しているが、五輪後の大量供給によって値崩れを懸念する声さえある。それに交通アクセスの面では少し課題が残る。地下鉄の駅が遠く、当面はバス便になるみたいだ。
D 既存地下鉄の延伸や新線の整備を求める声が根強い。地元の中央区はことし7月、都心と臨海部を結ぶ地下鉄新線の調査結果をまとめている。銀座付近の「(仮称)新銀座駅」から江東区の国際展示場付近「(仮称)新国際展示場駅」を結ぶ新線として3ルートを検討し、概算の総事業費を2500億円前後と見積もった。ただし、いまのところ、実現の可能性は未知数と言わざるを得ない。実現するとしても、かなりの時間がかかるだろう。
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