2014/05/13

【復興版】復興住宅のこえ JIA宮城がまちの再生めぐるシンポジウム【記者コメ付き!】

日本建築家協会東北支部宮城地域会(JIA宮城、鈴木弘二地域会長)などが主催する参加型シンポジウム「みやぎボイス2014・復興住宅のこえ」が11日、仙台市青葉区のせんだいメディアテークで開かれた=写真。復興公営住宅や自力再建住宅を中心に住宅とまちの整備、コミュニティーづくりの「担い手」と「支え手」「作り手」が連携・協働する“共創”のプラットフォームとして開催したもので、直面する課題への認識を共有するとともに、その改善に向け議論を深めた。
【執筆者からひとこと】
 会場には、設計、行政、学識者、住民の参加がありましたが、今回は、ゼネコンや地元業者がいませんでした。実際の建設を担当する立場の人も一緒になって議論できる場もあればいいですね。
 被災者と行政、建築家や学識経験者、NPOなどの専門家が一堂に会し、ラウンドテーブル形式で行われた意見交換では、テーブルA(ファシリテーター=増田聡東北大大学院教授)が市街地郊外平野部として岩沼市玉浦西地区と東矢本駅北地区、テーブルB(同=米野史健国土技術政策総合研究所主任研究官)は沿岸半島部として石巻市北上地区、テーブルC(同=榊原進都市デザインワークス代表理事)は既存市街地として石巻市中心部を取り上げ、それぞれの地域特性を踏まえ議論した。

ラウンドテーブルは市街地郊外平野部、沿岸半島部、既存市街地のテーマで3つに分けて議論が行われた
このうち、テーブルAは、4月下旬に全世帯の宅地引き渡しが完了した玉浦西地区と、3月下旬から災害公営住宅の建設が本格化した東矢本駅北地区における移転後のコミュニティーづくりが焦点となった。
 被災前の集落ごとに集団移転する玉浦西地区は、従前のコミュニティーを維持しつつ、町内会数を再編することで、新たなコミュニティーへの緩やかな移行を促しているという。こうした取り組みに増田氏は、「将来、人口や世帯構成が変化する中、地域が必要とするニーズを発掘し、どう実現していくかが課題だ」とし、住宅地としてのハードとソフトに加えて、雇用や通勤など周辺環境を含めた議論や計画づくり、手法の必要性を指摘した。
 大沼正寛東北工大准教授は「作り手が整える空間は人がいてこそ生きるものだ。空間を耕しながら、より豊かに暮らすという覚悟が担い手にも必要」との考えを示し、住民や地域の自発的な活動を促す仕組みづくりを呼び掛けた。
 テーブルBは、JIA宮城が復興を支援する石巻市北上地区の話題を中心に、漁業や農業などのなりわいの再生と、高齢化や人口流出という社会問題への対応がテーマとなった。
 この中で小野田泰明東北大大学院教授は、「住宅を建てるだけでは世代の再生産につながらない。復興の指標となっている量的成果だけにとらわれず、なりわいを含む地域の将来ビジョンに沿った質的な成果を論じるべきだ」と提起した。竹内泰宮城大准教授も「住民の自発的な動きによる新たなビジネスが生まれている。こうした小さな動きを外部が支え、地域再生の契機となる仕組みが必要だ」と訴えた。
 テーブルCでは、震災後に小規模な再開発の動きが活発化している石巻市中心市街地での復興とまちづくりの動き、ビジネスモデルなどが紹介された。商業や医療、福祉、交通などが集積する多様性というメリットを生かした中心市街地ならではの「街中暮らし」を巡って議論が展開された。
 この中で、榊原氏は「好事例を“見える化”して発信することで、まちづくりに無関心な層を取り込む必要がある」とし、野原卓横国大准教授も「マンガと食という市が掲げる中心市街地の大きなビジョンと、個別の小さな動きをどのように結びつけていくかかぎだ」と指摘。石川幹子中央大教授は「住宅計画は単体では成立せず、地域との関係性の中にあるものだ。さまざまな周辺環境を含め、それを見極めていく視点が重要だ」と語った。
 また、鈴木浩福島大名誉教授は「コミュニティーの育成には、地方自治と地域自治をそれぞれ育てていく必要がある。被災地に限らずコミュニティーとまちの再生が必要とされる中、JIAが全国でコミュニティーの再生を支援することが、ひいては被災地の復興支援にもつながるのではないか」とJIAの活動に期待を寄せた。

災害公営住宅や防災集団移転団地の模型も展示された
小野田氏は「行政機関の縦割りが復興事業の支障となっていると指摘する声もあるが、既存の制度を横方向に丁寧につなぎながら事業化していくことが大切だ」と強調。「今回取り上げた好事例に限らず、失敗した事例の経験も自分たちの問題として共有していくべきだ」と呼び掛けた。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

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