2014/05/19

【現地ルポ】専門誌記者が見た福島第一原発の「凍土遮水壁」【記者コメ付き】

経済産業省と鹿島は、東京電力福島第一原子力発電所で実施している凍土遮水壁実証試験事業を公開した=写真。公開されたのは、4号機建屋西側に設置された小規模凍土遮水壁。遮水効果や耐久性など凍土方式による事業効果を確認するため設けられた10m×10mの実証施設だ。45本の凍結管が埋め込まれた実証区画内の土を削るとうっすら霜が降り、しっかりと凍っていた。
 写真は報道陣に公開された凍土遮水壁実証実験(16日、福島第一原子力発電所・代表撮影)。
記者から:日頃の取材とは異なり、かなりの緊張感で現場に臨んだ。現場には緊張感が満ちており、福島のために何ができるか、を本気で考えた】
 東京電力福島第一原子力発電所における凍土方式による遮水技術に関するフィージビリティ・スタディ(FS)事業(採択事業者=鹿島)は、汚染水処理対策の一環として、資源エネルギー庁が原子炉建屋などへの地下水の流入抑制を目的に実施するプロジェクトだ。
 地中に凍結管を一定間隔で埋め込み、この管内を冷却させることで凍結管を中心に凍土を造成。凍土の壁で1-4号機の原子炉建屋を取り囲むことで、汚染水が滞留する原子炉建屋(汚染源)への地下水の流入・流出を遮断、汚染水の増加を抑制する取り組みとなる。
 凍土方式(凍結工法)は本来、軟弱地盤におけるシールドトンネルの掘削など掘削時の地山自立性を確保するための技術。これを汚染水処理対策の1つとなる「遮水壁」の構築に応用する。
 16日に現地公開した小規模凍土遮水壁(実証施設)は約10mメッシュの規模。地下26.4mの深さまで45本の凍結管が埋まっている。3月14日から凍結を開始し、現地の地盤での凍結性能や遮水性など、凍土壁そのものの成立性を判断。この日の現地公開に至った。
 実際に「現時点で技術的な課題はない」(鹿島)と自信を見せるように、「凍土壁によって遮水性が確保できることを確認している。現実的に有効な結果を得られている」(東京電力)という。
 凍土壁は、高い遮水性能に加え、施工性の良さが最大の売り。埋設物がある個所でも施工が可能で、一度地中に構築されれば、長期にわたって健全性を維持する。仮に地震などでクラックが入ったとしても、水分があれば修復する「自己修復性」も持つ。
 1-4号機(建屋)を囲む総延長約1500m(深さ30m)の凍土遮水壁を構築する大規模実証事業(本体工事)への着手は6月を予定している。今年度内には、凍結管やプラントの設置を終え、本体工事の運用が開始される見込みだ。
 本体工事の凍土造成量は約7万m3。国内で多数の使用実績がある凍結工法とはいえ、過去最大規模とされる都営10号線営団11号線九段下第二工区日本橋川河底部隧道築造防護凍結工事(1980年)の約4万m3を上回る規模となる。
 ロードマップによれば、2020年まで約7年間もの長期にわたって運用される見通しだ。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

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