2014/05/02

【自治体】「テナント撤退再開発ビル」に市庁舎移転

土浦市新庁舎の外観イメージ
東日本大震災後、庁舎の建て替え事業が相次ぐ茨城県内の自治体。中でも土浦市と筑西市は、核テナントが抜けた市街地再開発ビルに機能を移そうとしている。新庁舎の建設に比べ事業費を抑えられるだけでなく、中心市街地の活性化を同時に達成しようとする試みだ。これまでの経緯や議場の高さ確保対策など動向をまとめた。

◆土浦市「ウララI」/市民の利便性など4つの視点で決定

 土浦市は、1980年代後半から90年代前半にかけ本庁舎を建て替える方向で検討を進めていたが、経済情勢の悪化などを理由に事業は頓挫。
 その後、2006年に新治村と合併し、4庁舎に機能が分散する事態となったことなどから検討を再開。財源に合併特例債を使えることも後押しした。11年度には庁舎建設審議会を設置し、現在地を含めた9つの候補地を対象に比較検討を進めていた。
 しかし、JR常磐線・土浦駅前にある市街地再開発ビル「ウララ」3棟(97年9月完成)のうち、ウララIの核テナントを営業するイトーヨーカ堂から、13年2月末に閉店するため床を買い取ってほしいとの話が市に寄せられたことで事態は急展開。

土浦市新庁舎の1階イメージ。ガラスの壁で見通しとセキュリティーを確保した
市は、ウララIを候補地の1つに追加するよう審議会に提案。審議会は、ウララIを含め2カ所を市に答申し、市はウララIを候補地とした。中川清市長は当時、「市民の利便性、持続可能なまちづくりへの貢献性、経済性、事業の迅速性の4つの視点から絞り込んだ」との内容を議会で答弁している。空洞化が進む同駅周辺の活性化に寄与するだけでなく、新庁舎建設に比べ、ウララIの床取得と耐震改修による整備の費用が大幅に安く済み、早期に供用を開始できることが決め手となった。
 その後は、13年3月に新庁舎整備基本計画を策定。ウララIを中心に庁舎を配置し、通路で接続しているウララIIにも不足分を充てる方針を固めた。ウララIの屋外広場には、災害時に活用するため大屋根をかける。
 現在、施工者の選定に向け一般競争入札を公告しており、5月21日に決まれば14年度内の工事を経て15年5月の開庁を予定している。

◆筑西市「スピカ」/6月議会に条例案/年度内に設計委託


スピカビルの地上1階配置イメージ
一方、筑西市では、JR水戸線、関東鉄道常総線、真岡鉄道真岡線が乗り入れる下館駅の北口にある市街地再開発ビル「スピカ」(地下1階地上7階建て、91年5月完成)のキーテナントが02年に倒産。03年に市が床を取得し、リニューアルオープンしたものの、2度にわたり核テナントが撤退。やむなく07年には床の一部に市役所分庁舎を開設させた。
 前市長が09年に就任した後も、民間活力による再生を期待し、ビルの売却手続きを開始。11年8月に落札者が決まったが、スピカへの庁舎移転を求める議会が反発し、話は流れた。さらに議会は、現庁舎の耐震補強工事費を含めた13年度予算案を否決した。
 しかし、13年4月の市長選でスピカへの庁舎移転を掲げる須藤茂市長が当選したことで事態は一変。ことし3月にはスピカビル活用プラン案を作成し、地下1階から地上4階を中心に庁舎を配置。入口に近い地下1階と地上1階には、施設案内と観光案内を兼ねた総合案内所などの市民サービス機能を新たに設ける内容となっている。

スピカビルのフロア構成
須藤市長は、庁舎移転に必要な条例改正議案を早ければ「市議会6月定例会に提出したい」との考えを表明。その後は、14年度内に改修設計を委託・完了させる予定だ。15年度に工事を実施し、16年度の開庁を見込む。

*   *

 いずれの再開発ビルも商業・業務用に建設されたため、議場の高さ確保には検討を要した。土浦市は改修する際に天井板を従来より高く設置することで課題を解消。筑西市は、柱による死角がなく天井が高い6階の文化ギャラリーを転用する予定だ。
 両市の庁舎移転事業が実現すれば、今後、財政が厳しく、中心市街地の衰退にも悩む自治体にとって役立つ事例となりそうだ。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

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