2014/05/07

【人手不足】好況なのに…米国でも深刻 官民挙げて若手育成に注力

日本と同様に、米国でも建設技能労働者の確保・育成が大きな課題になっている。米建設市場は2008年のリーマン・ショック以降、長らく低迷を続けてきたが、最近のシェールガス革命を起爆剤に好転。建設投資は上向いているものの、低迷期に大量放出した労働力は戻っておらず、プロジェクトの遅延や新規制約の要因になっているという。日本の団塊の世代に当たる「ベビーブーマー世代」の大量退職が、人手不足の深刻化に拍車を掛ける見込みも類似している。

 建設経済研究所がまとめたレポートによると、米国ではリーマン・ショック後、建設セクターの不況が続いていたが、エネルギーインフラ分野を中心に建設投資にも明るさが戻ってきている。
 13年の米建設市場は前年比5%の伸びを示し、14年はさらに9%の伸びが期待されているという。14年以降の3-4年間は、年率6-10%の堅調な伸びになるとの見通しもある。
 この数年間、米国の建設市場は縮小を余儀なくされ、建設労働市場も大幅に削減されてきた。07年から11年までに、建設分野の雇用者数は763万人から550万人へと、200万人以上も減少した。
 この流れは、最近のシェールガスブームによって一挙に逆転してきている。米国の主要発注者と建設会社からなる連合組織「CURT」では、17年までに全米で200万人の建設労働者が不足すると予想。これから見込まれるベビーブーマー世代の大量退職といった要因も大きく、今後10年間で専門工事に従事する技能労働者のうち、6人に1人が建設労働市場から退場すると予測している。
 技能労働者不足は、サブプライム危機による不動産不況が直撃し、現在シェールガス案件が集中する米国南部湾岸エリアで特に深刻になっている。不足職種は配管工、電気工、溶接工、重機オペレーターなど多岐にわたり、事業進捗の遅れや新規案件を制約せざるを得ない原因にもなってきているという。
 こうした状況を受け、米建設産業界は行政・業界を挙げて、若年労働者の技能研修に力を入れている。連邦政府の雇用・訓練省は、10年から新たな研修プログラムをスタートさせた。急拡大するシェールガスセクターに適応できるスキルを養成するため、各州の地方教育機関における若年者職業訓練に助成。12年からは研修項目を石油・ガス業界の資格認定制度とリンクさせ、履修者には専門技術者としての資格を付与するなど、プログラムをより実践的なものへと充実させている。
 地方政府も技能労働者の育成に注力し始めた。例えば、ルイジアナ州では新たに予算を措置して、州内の工業専門学校や工業高校の専門技能プログラムを強化する方針を打ち出しているという。
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