最優秀賞に選定されたカリフォルニア大学バークレー校の『NEST WE GROW』 |
審査委員長は建築家の隈研吾氏、審査員は工学博士で東大副学長の野城智也氏、造園家で農学博士の進士五十八氏、放送作家で脚本家の小山薫堂氏が務めた。
プレゼンテーションを終えて隈氏は「五感が食物、植物を通じてどう1つのデザインにまで高めるか」が焦点だったとした上で、「デザインの点ではバークレーとオスロの提案が面白かった」と感想を述べた。
バークレー校は大地から食べ物と家が生まれる空間、NEST(巣)の創出を提案。壁にかけられたプランターで多様な野菜を育て、栽培、収穫、収納、調理、消費、堆肥とすべての段階でコミュニティーが参加し、地産地消を実現する。日干しレンガで風を防ぎ、半透明の素材で覆い太陽光を取り入れ、屋根から雨水も利用するとしている。根の長さや、方角によって植物の配置を考えるなど緻密な計画となっている。
「さまざまな要素を重層的に重ね合わせて建築にする力量は並々ではない」(野城氏)、「建築が農業に対して何をできるかという挑戦は素晴らしい」(小山氏)との評価を受ける一方、「北海道でやる必然性があるのだろうか。あの限られた空間で野菜をつくると1年で終わって、連作できない」(進士氏)という指摘もあった。得票数でオスロの提案と並んだが、「『建築』であの条件に応えるとすると、トータルインパクトが一番ある」(隈氏)として最優秀賞に決まった。
オスロ建築デザイン大の提案はすべての建築物を敷地西側に集中し、東側は開放的なランドスケープを展開。庭と屋台空間を散歩道で結ぶシンプルな構造。訪問者は庭から野菜や果物を収穫し、料理を好きな場所で食べることができる。
「北欧的なものと日本の木造建築での相似性が、ランドスケープ的な軸線と組み合わされて力を発揮した」(隈氏)、「質が高くてストイックにつくられた。(課題の)土地の読み取りがよくされている」(野城氏)、「大自然とどう対峙するかという原型を見せてくれた。北海道のような広いランドスケープでは有効」(進士氏)、「使い方によっては可能性が広がる」(小山氏)と高い評価を得た。ただ、シンプルな構成のため、企画力、ソフトの充実が必要という意見も多かった。
東京農業大は薫製を核にした提案。燻(いぶ)す、乾燥、スパイス、食べるの4工程に合わせた建物構成とした。審査員からは「現実性がある」としながらも、「国際建築コンペとして」建築物の評価が得られず票は伸びなかった。
最優秀作品は、「メム メドウズ」内に隈研吾建築都市設計事務所監修のもと実際に建設される。今夏に着工、秋には竣工する予定だ。
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