歴史的建造物調査・保存・活用研究会を設立した高橋恒夫東北工大教授 |
【民家調査は日本建築史の根幹/国立歴史民俗博物館名誉教授 玉井 哲雄氏】
玉井哲雄国立歴史民族博物館名誉教授 |
一方、玉井氏や高橋氏のような民家調査そのものの担い手が減少していることを踏まえて、「長期にわたって取り組むべき問題であり、若者の積極的な参加を促し、後継者を育ててほしい」と同研究会の取り組みに期待を寄せた。
【痕跡で創建当初の姿明らかに/風土建築文化研究室代表 伊藤 則子氏】
伊藤則子風土建築文化研究室代表 |
明治初期に建てられた松亀園は、1876(明治9)年に明治天皇の東北御巡幸に随行した大隈重信が宿泊するなど、まちの歴史を伝える数少ない建物の一つとして、市民に親しまれてきた。震災の津波で一部が浸水し、解体の危機にあったが、地元のNPO法人みなとしほがま(菅原周二理事長)が保存・活用へと動き出している。
伊藤氏は、「かつてあった部材の跡などを丹念に読み取り、創建当初の姿を図面に落とし込む」という痕跡調査の手法を紹介しつつ、「何世代にもわたって住み続ける間に埋もれた姿を引き出すことで選択肢を増やし、より良く使い続けられるあり方を考えたい」と語った。
【津波乗り越えたスレート民家/東北工業大学准教授 大沼 正寛氏】
大沼正寛東北工業大学准教授 |
大沼氏は、「雄勝地区には、屋根や壁にスレートが使用された民家が目立ち、独特の建築様式が広がっているものの、東日本大震災以降、公費解体制度で、こうした貴重な建物が消滅の危機にある」と警鐘を鳴らした。
こうした建物の中には、所有者が保存を望んでいるものの、災害危険区域に指定されたことで、住みながら保存することを断念しなければならないケースもあるため、「地域産業を生かして、津波からの復興を成し遂げた災害遺構群として、従来の文化財保護や景観論を越えた継承のあり方が必要ではないか」と、地域の歴史や文化を伝える民家の新たな保存・活用方法のあり方を訴えた。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)
0 コメント :
コメントを投稿