2014/05/18

【素材NOW】屋根のプロが磨く太陽光パネルの進化 元旦ビューティ

白州技術センターは1994年に完成
「ここで技術が生まれ、育っていく」。元旦ビューティ工業の舩木元旦会長は白州技術センター(山梨県北杜市)の役割を、そう表現する。4月にはセンターの屋根に設置していた太陽光発電システムを最新の技術に全面刷新した。年間を通し、自社製品の有効性を多角的に検証する。そこには「技術を売る会社」のこだわりが詰まっている。
 太陽光発電の買取価格は住宅用、メガソーラー用ともに引き下げられたものの、省エネ要求を背景に太陽光パネルの設置需要はいまだ活況を呈している。同社の太陽光発電関連分野は売上高の30%近くまで比率を伸ばす。このうちパネル設置の金具販売だけで3割程度を占める。1件のメガソーラープロジェクトで3万個もの取付金具を提供した実績もあるほどだ。
 「太陽光発電の部分だけで営業をせず、屋根をセットにしたトータル営業を心がけてほしい」。舩木会長は社員を鼓舞し続けている。1994年に完成した白州技術センターは新製品開発の中核拠点として、実証研究の役割も担っている。40人近くが寝泊まりでき、ここで社員や施工店の技術者は集中的に技術を学ぶ。「いわば技術検証の拠点であり、教育の場でもある」という舩木会長自身も年に十数回は足を運んでいる。

一発ボルト締めを実現したハゼ式折半屋根用のソーラーパネル取付金具
13年9月に刷新したハゼ式折半屋根用のソーラーパネル取付金具は、旧タイプと比べ70%増の売れ行きで推移するヒット商品の1つ。アルミを押出型材に採用した軽量化と、一発ボルト締めを実現した施工性が評価を得ている。旧タイプを1つ取り付ける間に3つは設置できる作業性の良さが他社製品を圧倒している。
 社員は新商品の取り付けを自ら体験し、製品の有効性を体で知る。施工協力会社約700社が加盟する「元旦会」も、ここで技術を習得する。5年前に制度化した金属屋根マイスターは約140人となり、その研修会場としても使われている。「ただパネルを載せるだけではない。いかに屋根と一体化させることができるか。屋根メーカーだからこその技術がそこにある」(舩木会長)。
 白州技術センターがモジュール設置を終えたのは1月。空気流動で発電効率の低下を抑制する『元旦ウイング』や屋根一体型の両面発電ソーラーシステム『サン・ボース』など最新技術を一挙に導入した。年間発電量は7万kW時を見込むが、早くも新製品の導入効果が検証結果として見え始めている。
 2月に首都圏を襲った大雪では、屋根に高さ1.5mもの積雪を記録した。積雪荷重は高さ30cmに設定しているが、被害はなく、しかも空気流動を発生させる元旦ウイングは雪解けの時間も短縮する間接的な効果もあった。雪解け後の発電効率はウイングなしの場合と比較すると、冬の寒い時期でありながら瞬間計測で0.1kWの発電効率となり、夏場の猛暑では発電効率の低下抑制効果をさらに発揮できるとの手応えを得た。
 両面発電は、表面を直射光、裏面を反射光から発電する仕組み。反射効率を上げるため、下地色を白にする制約もあり、新築工事が中心になる。適用事例はまだ10件と少ないものの、発電量を120%向上できる性能を武器に4、5年後には軌道に乗せる戦略図を描く。

1分ごとに発電量を計測
センター玄関に設置されたモニターには、1分ごとに発電量の推移が映し出される。発電した電力はセンター運営に活用するほか、余剰電力は売電も予定している。1年を通して性能をサンプリング調査し、その結果は次の開発データとして活用する。一般的に太陽光の発電量は設置容量の約80%と言われているが、試運転時で既に95%もの発電量が確認されている。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

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