6階建ての建物の4階部分まで浸水した「たろう観光ホテル」 |
宮古市は、津波により壊滅的な被害を受けた。その経験を踏まえた防災・減災対策や災害の記憶を、震災の教訓として後世に伝えていくことを市の使命と位置付けている。復興計画でも「災害の記憶伝承プロジェクト」を掲げ、その取り組みの一つとして、「たろう観光ホテル」を津波遺構として保存整備する。
同ホテルは、市沿岸部の田老地区に立地し、津波により6階建ての建物の4階部分まで浸水した。特に1-3階は壊滅的な被害を受け、2階部分までは鉄骨の構造だけが残っている状態となっている。
市は震災の記憶を風化させることなく、市内外に津波の恐ろしさを伝え、津波防災の重要性を発信するシンボルとして、ホテルを保存整備する。丹青社の調査報告を受けて、近く設計業務を発注。2015年度当初の完成を目指している。工事費は復興交付金を活用し、調査費に3500万円、初期保存に必要な工事費として2億1000万円を配分している。
市がホテルや土地を買い取り、保存整備工事が完了後は入場料金によって維持管理費を賄う計画だ。ただ、長期にわたって施設を維持・活用していくためには一定の経費を要するほか、遺構周辺の整備も求められる。そのため広く寄付を募り、これらの費用の財源として充てることにした。市のホームページなどで寄付への協力を呼び掛けている。
復興庁では、震災遺構の保存などに市町村が寄付金を募る場合に、その情報発信を支援することを表明、その第1弾として宮古市を支援する。同庁ホームページでのリンク掲載のほか、市からの要望を踏まえ、復興庁が参加するイベントなどでの震災遺構に関するパンフレット配布といった取り組みを進める。
根本匠復興相は会見などで「遺構の保存は被災した自治体の考えを優先する」とした上で、「復興庁では、市町村が寄付金を募る場合にその発信力を高めるため、協力をさせてもらう」と、積極的に支援していく姿勢を示している。今後の活動についても「寄付金募集に関する情報発信についてお手伝いできることがあれば、市町村の要望を丁寧に伺いつつ対応していきたい」と述べており、新たな要請が市町村からあれば、要望に沿って対応していく考えだ。
宮古市の震災遺構保存整備の取り組みは、ふるさと納税の活用の一事例として政府インターネットテレビでも取り上げられている。
同保存整備事業に関する寄付金の送付先は、〒027-8501 宮古市新川町2-1 宮古市財政課まで。問い合わせは、総務企画部復興推進課・電話0193-62-2111
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