架設桟橋から斜杭を打設 |
サンドバイパスシステムは、オーストラリアのカルドノ社が保有する技術。県は2003年8月から学識者らによる委員会を設置して検討を進め、採用を決めた。従来の浚渫・運搬に比べ、ライフサイクルコストを低減でき、環境にもやさしいからだ。海に突き出した桟橋を整備し、そこに設置した4基の「ジェットポンプ」が砂を吸い上げ、ポンプ場を経由して2.2㎞離れた海岸に送り出す。年間約8万m3の土砂を移動させる計画となっている。
五洋建設はカルドノ社と技術協力の提携を結んでいるものの、実際に施工するのは初めてだ。作業船を使った海洋土木工事が同社の強みだが、今回の施工には作業船を使っていない。砂の堆積によって水深が浅く、船を使えなかったのだ。このため仮設桟橋を設置してからの本施工となった。
採砂桟橋の施工では、鋼管杭の打設が難関の1つだった。五洋建設の盛英工事所長は「これまでに取り組んだことのない工法だった」と振り返る。桟橋の右手側は斜杭となっているが、一定の傾きを保持しながら打設しなければならない。このため、H形鋼で構台を整備した上で施工に臨んだ。一方、打設精度を確保するためのシステムも導入し、オペレーターは画面上に表示される打設角を見ながら杭を打ち込んだ。盛所長は「施工精度はかなり高い」と自信をのぞかせる。
ジェットポンプを設置した採砂桟橋 |
日本初のシステムだが、輸入したのはこのジェットポンプのみ。他の設備はすべて国内で調達している。今回のプロジェクトを通じて得られたのは、施工面でのノウハウだけではない。システムの制御・運用といった面での実績作りも大きい。システムの調達や制御などを担った船舶機械部の岡田英明担当課長は「日本初のシステムだけに制御や設定が非常に悩ましかったが、ノウハウを蓄積でき技術者としても勉強になった」と話す。
2.2キロ離れた海岸に砂を送り出す |
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