2015/10/05

【インタビュー】富士教育訓練センター建替がついに起工! 才賀清二郎会長に聞く


 富士教育訓練センター建て替え工事の起工式が9月16日に行われ、本格着工となった。建設産業の担い手確保と人材育成の文字どおり中心として期待が高まるセンターの現状とこれからについて建設産業専門団体連合会(建専連)はどう見ているのか。さらに、その先の人材の確保と育成についてのビジョンはどう考えているのか。本館と教室棟などの2期工事の見通しや専門工事業の課題、行政側への要望について、センターを運営する全国建設産業教育訓練協会の会長も務める才賀清二郎建専連会長に聞いた。

--センターの起工式を終えて、いまの思いは
 「やっと建て替えられるというのが率直な思いだ。2013年に太田昭宏国土交通相が視察に訪れたことを契機に建て替え計画がスタートし、2年かかってようやく着工できた」
 「起工式のあいさつでも話したが、建て替え工事は道半ばだ。本館と教室棟の工事を残したことを、雲のかかった富士山のようだと表現したとおり、残念だという気持ちが大きい」

 
富士教育訓練センター建替え工事は9月16日に起工、本格着工した
--2期工事については
 「1期工事と同じく木内建設に任せたいと考えている。工事の中に、訓練生が実習で仕上げる壁面スペースを確保するなど、教育訓練への理解は高く評価できる。1期工事で培ったノウハウを生かせば、より効率よく低コストでできると思う」
 「ネックとなるのは建て替え費用をどう捻出するかだ。内装工事などを実習で行ったり、各企業から資材提供を受けるなどコストを減らすさまざまな案を出して、2期工事は知恵と汗とアイデアで対応していきたい」

--建て替えの資金はどうか
 「1期工事の工費が約26億円で、2期工事に関してはこれから見積もってもらう。補助金などを利用し、全員で知恵と汗を出して工事の完成を目指す。本館を耐震補強のみにするなど柔軟な対応も考えてはいるが、なんとしても資金を集める心づもりだ」
 
--今後のセンターの運営について
 「教育訓練の内容については従来どおり、オーダーメードで対応していく。建て替えによって宿泊可能人数が増え、施設がきれいで機能的になることで受け入れ人数の増加を期待している。訓練の対象者が広がり、カリキュラムも多岐にわたっているが、専門工事業者の従業員教育を置き去りにしてはセンターは成り立たない。初心を忘れないということは、常にセンターの職員にも伝えてある」
 「また、教育者を養成する制度についても確立すべきだ。08年の登録基幹技能者制度開始から、やり方も使う機械も日々変化している。2-3年ごとにセンターを活用して基幹技能者の講師に基本問題の研修会をしてはどうだろうか。センターで研修を受けた講師が、若い研修生に対して教えることで相乗効果が生まれるだろう」

 
建て替え後の富士教育訓練センター外環イメージ
--専門工事業の人材確保について
 「ある地方で建設業界に60人入職するという話を聞いたが、フタを開けてみれば専門工事業には1人も入らなかった。大半がゼネコン社員や県、市町村の職員になった」
 「労働環境の改善が必須であると考える。人数の少ない専門工事業ではどうしても休みが取りにくい。ゼネコンのように持ち回りで休むということも難しい。単独ではなく、日本建設産業職員労働組合協議会(日建協)などと共同で、労働者側から環境改善を訴えていくことも必要だ」

--行政への要望は
 「建設業に対してより親身になってほしい。いろいろな助成金を出してもらえるのは良いが、交付期限が切れた後の対応まで考えてもらいたい。助成金によって賃金を一度上げても、助成金が切れた後にまた下げるのでは意味がない。また、公共工事だけがすべてではないことも認識してほしい。適正な価格・工期について、ほかの省庁や学校、病院など機構・民間工事もできるようにしないとうまくはいかない」
 「社会保険加入の観点からは、建専連と国交省各地方整備局との意見交換会に厚生労働省の担当者にも出席してもらいたい。社会保険や年金の加入について厚労省の担当者に説明してもらえれば、よりスムーズに進むのではないか」

■横顔
 専門工事業団体の役員として、国土交通省や厚生労働省の委員会の委員として半世紀、建設業とりわけ専門工事業の社会的地位向上と発展に尽力してきた。特に02年に当時の社団法人全国建設専門工事業団体連合会と建設産業専門団体協議会が合併し、社団法人建設産業専門団体連合会を発足させた功績は大きい。また、そうそうたる先輩のいる中で、若いときから元請けや専門工事の団体の役員やトップに推薦されているように、義理人情に厚い人柄が信頼につながっている。75歳。
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