2012/09/05

現場最前線! 「12万台交通の直下に挑む」東京外環千葉区間・京葉JCT

12万台の交通を止めずに施工する
2015年度の開通を目指して建設が進む東京外環自動車道千葉県区間。千葉県市川市の東関東自動車道高谷ジャンクション(JCT・仮称)から京葉道路の京葉JCT(仮称)を結び、さらに埼玉県三郷市の三郷南インタチェンジ(IC)までを一気に結節する外環東側の完成ラインとなる。膨大な用地取得、京成線・JR総武線・都営新宿線との交差、複雑な立体交差工事の連続など、多くの課題をクリアしながら工事が進む。その中でも「稲荷木工区」は、1日12万台もの交通量がある京葉道路の市川IC直下で、将来の高速道路向けJCTを構築する難工事だ。工事を担当する東日本高速道路関東支社千葉工事事務所と作業所の取材を通して現場を紹介する。


◇外環千葉県区間結節の要所

 「用地買収は約3000件あったが、残りあと13件まで達した」。東日本高速道路関東支社の河島好広千葉工事事務所長は、全長約16㌔に及ぶ千葉県区間の用地について振り返る。加えて「施工区間全体で、500万m3に及ぶ発生土を場外搬出しなければならない」とも。この土量は東京ドーム4杯分。この量をダンプトラックで搬出するが、この区間にはもともと幹線道路が少なく、大規模地震にも耐える工事専用の長大仮設橋梁も構築している。
 工事発注では「設計付入札前技術提案交渉方式」を採用した。

◇工夫凝らし4次元的施工
ジャンクションの工事概要
「通常は設計施工を分離した発注方式だが、この方式では施工者のノウハウを反映しやすくなる」(河島所長)。この工事では、工期、工法、立地、施工の切り回しなど「4次元的な考え方が必要だった」(同)ことが工事を低コストで完遂するかぎとなっている。
 京葉JCT(仮称)の大半を占める「田尻工事」と、京葉道路直下の道路構造物を担う「京葉工事」を総称した稲荷木工区。田尻工事は大成建設・戸田建設・大豊建設JVが、京葉工事は大成建設が単独で施工している。
 函体の上に橋脚を載せる構造や、山留壁・杭を切削して通過しなければならないシールドトンネルなど「もっとも構造の複雑な工区がこの稲荷木だ」と、東日本高速の小暮英雄稲荷木工事長は説明する。
 田尻工事では、本線990mに加えて、東関東自動車道の高谷JCT(仮称)から京葉道路の東京方面に向かうFランプ、三郷方面からのDランプ、京葉道千葉方面から三郷方面に向かうAランプ、京葉道東京方面から高谷方面へのCランプなどを施工する。また、本線のうち京葉道路を切り回して先行施工する83mを担当しているのが京葉工事となる。

◇供用中の京葉道路を移す
迂回中の京葉道路東京方面行き

交通を止めずに直線になった
1日12万台の交通量がある京葉道路ではこの工事のために道路自体を北側に移設している。09年12月、迂回道路を新設、切り替えを実施し、元の京葉道路直下に外環本線とランプ部を構築した。ことし6月には、上り線だけを元の位置に戻し、現在は上下線の間でさらに本線とランプを構築中だ。
 「生きている交通との近接施工なので、沈下や山留の変形には気を遣う」とは京葉工事の寺下雅裕作業所長。5mピッチで沈下計を設置してきめの細かい管理を行う。既に道路の切り替えを2回経験、期間内の工事完了というプレッシャーも乗り越えてきた。交通の切り替えには、通行止めせず「頭押さえ」と呼ばれる方法を採った。
 難所の一つであるAランプは直径13mに及ぶ大断面泥土圧シールド工法による長さ約507mのトンネル、Dランプは小さな箱形の推進機を使って大断面トンネルを構築する「ハーモニカ工法」とアンダーピニング工法を使った非開削トンネルの施工区間だ。
 「シールドは大断面にも関わらず最小土被りが約2mという浅深度施工になる。またハーモニカ工法は最小旋回半径を55mにまで向上させた」と枌野勝也田尻工事作業所長は話す。田尻工事を担当する大成JVの総力を挙げて施工に取り組んでいる。
建設通信新聞2012年9月5日12面

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