2012/09/02

BIMで工事価格まで見える化! 美保テクノスの「MARES」

自動見積もりシステムの導入実績は7件
鳥取県米子市に本社を置く建設会社の美保テクノス(野津一成社長)では、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の導入によって、設計部門が営業に参加するケースが大幅に増加している。設計室の新田唯史統括課長は「設計施工案件の半分以上に、われわれ設計者が営業に出向いている」と、その状況を明かす。

 同社がBIMを導入したのは2004年。「設計者が先頭に立って営業する時代が必ず来る」と考えていた野津社長の号令が根底にあった。現時点では、企画から基本・実施設計までを一気通貫で行うBIMは設計施工で受注した建築プロジェクトの9割以上に達する。意匠の設計モデルをもとに施工図の作成も始めた。
 発足して4年目に入ったIPDセンターは、設計部門や施工部門の兼務者も含め総勢5人で構成している。その一員でもある新田氏は「各部門をつなぐ役割としてセンターが機能している」と強調する。BIMデータの情報共有に加え、新入社員を中心にBIMの考え方やツールの活用など社内教育の推進役も務める。入社後半年でBIMに対応できる人材を育てている。

◇自動見積もりを独自開発

 BIM導入の効果として、施主の受け止め方が以前とは大きく変わってきた。受注工事は老人ホームのほか、工場や事務所ビルなど非住宅分野も少なくない。営業担当と設計者が一対となり、受注提案を具体的にBIMで可視化して施主の理解を得ている。「施主とはコミュニケーションが取りやすくなり、これまで疎遠になっていた施主も理解を示してくれるようになった」(新田氏)。
 特筆すべきは、設計プランを示すだけでなく、数量情報をコストに置き換えて提示する手法が強みになっている点だ。同社では基本設計が完了した時点で、建設費を提示できる自動見積もりシステム「MARES(マーレス)」を独自開発し、11年から運用をスタートさせた。施主の反応も上々だ。導入プロジェクトは現時点で7件を数える。実施設計段階では施主の予算を見ながら、打ち合わせができるため、コストが合わない場合も施主の理解を得やすい。
 そもそも同社では、BIM導入の目的としてフロントローディング(業務の前倒し)を意識していたことから、その結果として「価格を見える化する」マーレスの開発にたどり着いた。今後は自動積算の精度向上とともに、BIMデータの施工図作成についてもシステムを確立する方針だ。
 社員数約150人の同社は建設業以外に、介護や不動産などの異分野にも事業展開している。新田氏は「近い将来、われわれのような中小建設会社にまでBIMが求められるようになれば、これまでの実績を生かし、BIM導入のコンサルティング事業も展開していきたい」とその先をしっかり見据えている。

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