2012/09/20

伝統木造技法で制震! 清水建設が木造構造で建物変形を2割低減

ダボ穴の長手方向に余裕を持たせている
清水建設は、伝統木造建築向けの制震板壁工法を開発した。金物やダンパーなどを一切使わない伝統木造の技法を応用した技術で、壁となる板同士を接続するためのダボに特殊な加工を加え、部材同士の摩擦力で地震の揺れを吸収する仕組み。震度7クラスの地震時に建物変形を2割程度低減できる。長明寺(東京都台東区)の本堂で初適用したほか、2号案件も内定している。同社は今後、社寺などの新築や改修に提案していく方針だ。

部材同士の摩擦力で揺れを吸収する
一般的な伝統建築の板壁は、両端の柱に縦方向の切り込みを入れ、そこに横長の板を順次落とし込んでいくことで壁を構築する。上下の板同士は、直方体のダボとダボ穴で接続してズレを防ぐ。
 同社が開発した制震板壁工法は、ダボとダボ穴の形状を工夫したことで、部材同士の摩擦力による制震効果を生み出す。通常、ダボとダボ穴のサイズは一致するように作られるが、上板のダボ穴をあえてダボよりも長手方向に大きく加工している。この“遊び"によって地震時の揺れを摩擦力で吸収する仕組みだ。
長明寺(東京都台東区)の本堂
ダボの頭部中央には長手方向に切り込みを入れ、そこにダボ穴と同じ長さを持つ板状楔(くさび)を挿入した上でダボ穴と接続する。この板状の楔は、接続時にダボを拡大させてダボ穴と密着させる効果がある。部材同士の接続部分には漆を塗るなど、摩擦力を安定させる工夫も採用している。
 実際の施工時には、従来の耐震板壁などを基本として、今回の制震板壁を複数個所に施工することで相乗効果が期待できる。標準的な本堂での費用は全木工事費の1%程度で済み、メンテナンスも必要ない。伝統木造建築にも耐震性が求められる一方で、金物やダンパーを使いたがらない施主も多い。同社は今回の技術でこうしたニーズに対応し、受注拡大を目指す。
建設通信新聞 2012年9月20日3面

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