2012/09/30

現場最前線・奥村組が取り組む石巻市災害廃棄物破砕・選別処理業務

重機と手作業で粗分別
津波で甚大な被害を受けた宮城県石巻市の半島部に位置する雄勝地区。発災当時は人の気配すらほとんど感じられなかったこの地区で、復興への第一歩となる災害廃棄物の破砕・選別処理業務が奥村組により進められている。この業務は、広大な市域に発生した膨大な災害廃棄物を迅速かつ円滑に処理するため、石巻市が発注したもので、地元被災者の雇用にも寄与している。
 津波に直撃され、現在は使用されていない雄勝中学校の校庭を活用した選別ヤードには、同社が岩手県山田町や野田村での災害廃棄物処理に導入し高い評価を得ている高速・高精度自動選別機を配置。回転式土砂精密分離や可燃物分離など多彩な機能を併せ持つ同選別機により、混合廃棄物を金属類、混合可燃物、コンクリートがら、アスファルトがら、木くず、土砂、その他の7品目に選別している。

◇焼却炉の負担軽減へ丁寧な選別

粗分別の近景
「運搬先の焼却炉に負担をかけないよう丁寧な選別を心掛けるとともに、災害廃棄物の安定した選別処理を進めるため、機械設備のメンテナンスには十分に気を配っている」と語るのは、現場をリードする船本光徳所長(奥村組)。
 1日当たりの処理量は200-250tに上り、市が当初設定していた150tを大きく上回る。ヤード周辺の1次仮置き場3カ所に集積された災害廃棄物のうち、B&G海洋センターと雄勝小学校の2カ所は既に処分が完了。残る町民グラウンド分も来年早々には処理を終える見通しだ。

◇地元から雇用、安全対策も万全

 ヤード内の作業従事者は約30人。同社社員を除き、そのほとんどは地元雇用だ。手選別ラインの従事者には65歳以上の高齢者も。「地元の方々を慣れない作業に従事させることに不安もあったが、採用面接で“災害ですべてを失ったがここで働くことで地域に貢献したい"という熱い思いを聞き、その熱意に応えたいという気持ちが勝った」と、同所長は採用時の経緯を振り返る。それだけに、安全対策に万全を期すのはもちろんのこと、熱中症対策や粉じん予防など、従事者の健康管理にも余念がない。
 8月中旬には、地域の伝統行事「雄勝灯籠流し」に使われた灯籠2000個のうち、300個を現地の社員が総出で作った。
 船本所長は、かつて雄勝地区に隣接する女川町で管渠シールド工事の経験を持つ。それだけに、「震災発生時には居ても立ってもいられなかった」。発災から1週間後には、当時の勤務地だった札幌支店から支援物資を積み込んで現地に入り、自衛隊とともに行方不明者の捜索や災害廃棄物の撤去に尽力した。
 「1日も早く災害廃棄物を処理し、美しい海岸線を持つ雄勝の復興に貢献しよう」という地域再生への固い決意を胸に、きょうも膨大な災害廃棄物の山に立ち向かう。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!) 2012年9月25日6面


Related Posts:

  • 【座談会】自衛隊と地域建設業 東日本大震災時の対応を幹部が振り返る 発災後、被災地には全国から官民の多様な機関が集結し、人命救助や緊急物資輸送、応急復旧工事などに当たった。中でも自衛隊員の貢献ぶりは多くの国民から高い評価を得た。しかし、その背景には国土交通省東北地方整備局や地元建設業界、全国ネットワークを持つ建設関係の団体・機関などとの協働作業があった。首都直下地震や南海トラフ地震などの発生が予測されている中、被災地で初動対応に当たった陸上自衛隊東北方面総監部の幹部4人による座談会を通じて、今後生かすべき震… Read More
  • 【教育復興応援団】安藤忠雄氏ら11人が福島県双葉郡で特別授業 福島県双葉郡に来春開校予定の県立中高一貫校で、宇宙飛行士の山崎直子氏、建築家の安藤忠雄氏ら各界で活躍する11人が特別授業を行うことになった。復興庁の小泉進次郎政務官が福島県郡山市を訪れ、明らかにした。  11人はこのために結成された「ふたばの教育復興応援団」のメンバーで、このほか小宮山宏元東大学長、劇作家の平田オリザ氏、作家の乙武洋匡氏、陸上競技の為末大氏、バドミントンの潮田玲子氏らが名を連ねる。小泉政務官もメンバーで、授業を行う。 特別授… Read More
  • 【除染工事】おんぶで行きましょう 福島・葛尾村で高齢地権者に現地説明 福島県葛尾村の除染工事を施工している奥村組・西松建設・大豊建設JVの第5工区(大豊建設担当)で、地権者との事前立ち会いでの職員の心温まる対応が、地元住民の共感を呼んでいる。 除染では作業着手前、地権者立ち会いのもと、現地で業務内容を説明し、理解を得る必要がある。しかし山間部の多い葛尾村では、自宅から離れた山中に除染対象の農地がある場合も多く、高齢の地権者が現地を訪れるのは困難なケースも見受けられる。  こうした中、同JV職員の山田浩史氏(大… Read More
  • 【ポケモンパーク】南相馬市に世代超えた遊び場 伊東豊雄、柳澤潤氏が設計 Tポイント・ジャパン、TSUTAYAカンパニー、ヤフー、建築家の伊東豊雄、柳澤潤の両氏、福島県南相馬市は、18日から人気ゲーム「ポケットモンスター(ポケモン)」の被災地支援活動「POKEMON with YOU」と共同で、同市にポケモンと遊ぶことのできるインドアパークをつくる「みんなの遊び場プロジェクト」をスタートする。  Tポイント・ジャパンが2011年から進めている東日本大震災復興支援プロジェクトの一環。被災地を応援するため、メンバ… Read More
  • 【復興版】幸せな帰町に向けて本音話そう 福島・広野町で国際シンポ 「あらゆるステーク・ホルダー(利害関係者)が本音で話し合える場が必要」--。福島県広野町で開かれた国際シンポジウム「広野町から考える~避難先からの“幸せな帰町”に向けて」では、中学生と子育て世代、シニア世代の代表が避難先から帰町するために必要な施設や、帰町後に感じていることなどについて意見を発表した。また、海外研究者らとの議論を踏まえて“広野からのメッセージ”をまとめ、世界に向けて発信した。写真は9月の完成に向けて整備が進む災害公営… Read More

0 コメント :

コメントを投稿