2012/09/11

飛島建設が奮闘中! 石巻の「石ノ森萬画館」修復工事

震災で甚大な被害を受けた宮城県石巻市。そのシンボル施設である『石ノ森萬画館』も津波で1階天井まで浸水した。震災発生から1年半がたった現在も休館を余儀なくされているが、早期再開を目指し、急ピッチで修復工事が進められている。指揮を執る飛島建設の三田村信統括所長は「多くの人の期待に応えるためにも早期復旧を目指したい」と意気込む。

 石ノ森萬画館は、日本を代表する漫画家で、石巻市に縁の深かった故石ノ森章太郎さんの世界を再現したテーマパークとして2001年7月にオープンした。
 外観デザインは石ノ森さんの遺志により「空飛ぶ円盤」がモチーフとなっており、市中心部を流れる旧北上川の河口近くの中瀬にドーム型の白く輝く屋根がぽっかりと浮かぶ。
 設計は日本設計、建築工事は飛島建設・丸本組・和田工業JVが担当。新築工事の現場代理人を務めたのが三田村所長だった。
 まったくと言ってよいほど縦軸と横軸が垂直に交わる部分がない楕円型の建物で、不規則に芯がずれているため、サッシュの開口部を決めるのにも“何度何分何秒"という座標を計算しながらの作業となった。

◇“納まり"は頭の中にある

館内の様子
今回の震災では、地震による本体の被害はほとんどなかったものの、新築時に三田村所長を悩ませた1階の仕上げ部分が壊滅したほか、機械設備などが使えなくなった。
 仕上げ部分の施工図を書き起こすのに最低でも2カ月は掛かると言われているが、三田村所長は「新築工事で悩み抜いて施工図をつくった分、納まりは頭の中に入っている。あとは当時を振り返りながら作業を進めるだけ」と気負いなく話す。
 三田村所長は、同市のもう一つのシンボル施設『宮城県慶長使節船ミュージアム(愛称=サン・ファン館)』の建設にも携わり、今回の津波被害で休館中となっている同施設の被災個所の解体・撤去工事も担当した。
 「石巻を象徴する両施設の建設に携わったことを誇りに思っていたが、今回また復旧を担当することができ、縁を感じる。施設が再開することでまちが再び活性化されることを心から祈りたい」と力を込める。
建設通信新聞 2012年9月11日6面

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