米国GSA本部 |
◇民間の開発を妨げない
GSAが「GSA 3D-4D BIMプログラム」を発表した03年は、米国でも一部の先進ユーザーが3次元CADを実設計に使えるかどうか模索している状況であった。BIMの将来性に着目したGSAのチャールズ・マッタ氏は、スタンフォード大学総合ファシリティエンジニアリングセンターのカルビン・カム氏をGSA本部に招き、GSAの導入プログラム作成に着手した。
GSAは米国の連邦政府機関の庁舎を整備・管理する機関であり、設計者でも施工者でもなければ、公的規格を開発する機関でもない。公的な発注機関としてGSAができるのは、民間における自由な開発を妨げることなく、誰にとっても好ましい方向にBIMの技術が育つよう発注者の姿勢を示すことであった。
◇オープンスタンダードの重要性
BIM導入を成功に至らしめるには、「技術」と「体制」とが「事業」に上手く結びつかなければならない。技術面でGSAが常に心がけているのは『オープンスタンダード』である。建物の寿命はアプリケーションの栄枯盛衰のサイクルより長く、建物情報は延々と引き継がれて使用される。GSAは、IFC、COBieなどの標準化されたフォーマットで納品するよう義務付けているほか、ノルウェーやフィンランドなどの公的発注機関と共同で、オープンスタンダード推進の声明を出している。
体制については、GSAは全国11の地方局に「BIMチャンピオン」と呼ばれる推進担当者を配置している。月一度の電話会議で、実プロジェクトで試している新たなアイデアを披露し合い、互いに切磋琢磨し合っている。
事業では、試行的にBIMの有効性を確認することから始め、05年には「07年度からすべての主要プロジェクトでBIMを使用する」という目標を公表した。これは米国で大きな反響を呼び、BIMの普及にはずみをつけた。
カム氏は、米国でもBIM導入に懐疑的な人は数多くいたと語っている。BIMで得られる成果は大きいが、課題も多い。その壁にひるむことなく、目標を立て、一歩一歩地道に問題を解決していった結果、GSAではいまその果実を得つつある。(内閣府沖縄総合事務局開発建設部営繕課長 大槻 泰士氏)
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