2012/09/26

現場最前線・運河下をシールド掘進! 東京都砂町水再生センター雨水放流渠工事

シールドトンネルの切り羽
東京都江東区の砂町水再生センターで、運河下の土被りが浅い軟弱地盤を泥水式シールド工法により掘削し、内径7.1m、延長約1.5㌔の雨水放流渠を構築する大規模工事が進んでいる。最小6.64mの低土被りのため、運河潮位の干満に伴う水圧の変化が地中にも影響する。施工するフジタ・佐藤工業・株木建設JVの佐藤工所長は「潮位変化に合わせ、シールドマシンの泥水圧力をリアルタイムに最適化するシステムを採用し、切羽の安定を図っている」と説明する。現在、シールドマシンは発進立坑から約750mの地点に到達。この先には、半径60mの急曲線部も待ち受ける。全体工期は約2年と非常にタイトだが、昼夜兼行で難工事の完遂に挑む。

◇運河下 低土被りの軟弱地盤貫く

 砂町水再生センターへ流入する雨水は現在、私有水面の砂町北運河に放流している。放流先は閉鎖水域で、周辺にはマリーナもあるため、以前から水質改善も望まれていた。そこで、東京都下水道局は新たな放流渠を建設し、水門外の公有水面に放流先を変更する事業に乗り出した。
 今回の工事は、日本下水道事業団が発注業務を担当。延長1539mのシールド区間のうち、6割が運河下に当たる。受注が決まったのは2011年2月。その後、シールドマシンの製作に入るわけだが、「東日本大震災の影響がある中で、マシンメーカーも昼夜問わず製作に全力を尽くしてくれたおかげで、工程の遅れは回避できた」(佐藤所長)。
 工場でのマシン製作中、現場では立坑や耐震護岸などの工事を着々と進めた。「ことし1月からマシンの現地組み立てや設備の準備に取りかかり、3月末に発進した。12月初旬には到達する予定」と春田俊哉現場代理人。
 厳しい立地条件を克服しつつ、わずか8カ月程度で掘削を終えるため、「8mの断面でありながら、掘進速度分速50mmに対応した設備仕様で高速施工に取り組んでいる」(佐藤所長)。セグメントには、逆止ピンを凹部に差し込むだけの継手構造を採用している。


◇緻密な管理でシールド掘進

 佐藤所長が最大の施工ポイントに挙げる「切羽の安定化、掘進精度、品質確保」を支えているのが、シールドマシンの統合掘進管理システムだ。マシンの姿勢や掘進状況、切羽状況のデータを常時収集・分析し、すぐさま最適な地山保持とジャッキ選択を行い、自動運転する。
 また、掘進個所の地層はN値1-3の軟弱な地盤だけでなく、メタンガスの発生が予想されるため、坑内はエアカーテンで仕切り、機内側を防爆仕様にしている。
 施工段階の難関ポイントの一つが、シールドトンネルとの距離が1・2mしかない既設管との交差部だ。既設管周囲の地盤改良には、水中に排泥を拡散させないように、排泥をポンプアップできる「MJS工法」を選択した。
 既設下水道管を上部にかかえる区間などには、柔らかい高粘性塑性流動化材を充填し、地山の安定を図る。まもなく、交差部や曲線部という難所を掘進する予定で、佐藤所長は「今後も気を抜かず、施工管理を徹底しないといけない」と気を引き締める。
 工期は13年3月15日まで。豪雨時の雨水を一時的に貯める貯留機能も併せ持つ、雨水放流渠は他工事の完了後、14年度に供用する見通しだ。
 この現場では、省エネや安全対策にも注力している。事務所や中央制御室の屋上には太陽光パネルを設置。トンネル内の照明などはLED(発光ダイオード)化し、場内照明は水銀灯の代わりに高効率LED照明を採用、消費電力を40%削減している。事務所周りには熱中症対策として遮熱性舗装も施した。
 気温や湿度、気圧、雨量、風速、風向を確認できる簡易気象計測システムを取り入れ、環境変化に応じた施工管理を実施。例えば風速が10mを超えれば、警報を発して作業停止を知らせる。高度利用者向けの緊急地震速報システムも導入し、震度4以上が想定された場合は、切羽先端の作業員にも分かるよう音声警報が発せられる。
 電力使用量やCO2排出量、気象の計測データを、リアルタイムに把握できるモニタリング体制も整えている。
建設通信新聞 2012年9月26日14面

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