2012/09/26

墨出し作業はもういらない!? 鉄骨建方に計測技研がスマホシステム

スマホとTSで現場計測
計測技術(兵庫県尼崎市)が鉄骨建方業務の効率化に向け、スマートフォンを使ったWebシステムの本格導入に踏み切ったのは2009年末。橋村義人常務東京事務所所長は「墨出し作業が必要なく、図面データから鉄骨の建て位置をダイレクトに計測できる効率的な現場支援が可能になった」と胸を張る。
 従来は、墨出しを行い2方向から測量機のトランシットを使って鉄骨の立ち位置を計測していた。一連の作業には最低でも2人が必要となり、施工精度は担当者の技量による部分もあった。しかも複雑な構造であるほど、熟練の技が求められていた。
 開発したシステムは、3次元測量機のトータルステーションに接続したスマートフォンから位置情報を転送し、自社のサーバーにある図面データ(設計値)との自動照合を行う。鉄骨に貼ったターゲットシールをトータルステーションの計測点とし、そこにレーザーを当て、厳密な3次元座標の位置を見定める。1人でも一連の作業が可能となり、大幅な省力化につながる。
 建て方の計測業者として、全国で常時20件程度の現場支援を手掛けている同社では、システムの本格導入以降、大規模工事を中心に年間5件程度の現場で使われるようになった。橋村常務は「イノベーション感覚を大切にしてくれる施工者に支持される傾向が強く、今後さらに採用件数は増えていくだろう」と明かす。

鳥取県米子市で建設中のある大型精密工場ではBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の導入に精力的な施工者が、構造設計で使っていたテクラのBIMソフト『Tekla Structures』とのデータ連携を求めてきた。テクラとパートナーシップ契約を結び、3カ月かけてBIMデータから3次元座標を抽出するシステムを確立した。
 2次元データに対応した現行のWebシステムでは、柱サイズや通り芯のピッチなどを図面データから事前に洗い出す手間があった。BIMデータは不整合がないため、現場合わせの必要もなくなる。3次元データからダイレクトに建て方データを抽出できることで、予想以上の大幅な業務効率が実現できた。
 BIMデータとの連携事例はまだ1件に過ぎないが、大手ゼネコンを中心に大型建築現場でのBIM導入が加速する中で、「Webシステムの効果を最大限発揮できることは間違いない。BIM導入プロジェクトが普及すれば、ますます当社の優位性を生かせる」と、橋村常務はBIM時代の到来に期待を込める。
建設通信新聞 2012年9月26日14面

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