2012/09/22

老舗の味が復活へ 200年の歴史を持つ陸前高田の「八木澤商店」

入母屋造りの外観デザイン
震災から1年半が過ぎ、徐々に本格的な復興にこぎ着ける企業・法人も出始めた。岩手県陸前高田市でしょうゆを醸造していた八木澤商店(河野通洋社長)もその一つだ。同県内陸部の一関市大東町大原に本願だったしょうゆ工場を再建中で、富士古河E&Cが設計・監理、建築、電気、給排水、衛生を一括で施工し、いままさに工事の最盛期を迎えている。


内部は最新の設備でHACCPにも準拠
◇200年の伝統を設計に

 八木澤商店の創業は文化4(1807)年で、200年を超える歴史を持つ。だが、今回の地震と津波で本店、工場、蔵が全壊・流失した。再建中の大原工場は、旧大原小学校の跡地に建設している。
 つゆ・たれ製造棟、原料処理棟、生産処理棟合わせて延べ約1500㎡規模の工場だ。長谷川建設(陸前高田市)が施工協力し、醸造プラントは永田醸造機械(神戸市)が納める。
 建屋はS造なのだが、随所にこだわりがある。「200年余の伝統と格式を表し、これから先100年、200年継続できるような設計で臨んだ」(早川和孝富士古河E&C営業本部復興支援プロジェクト室主幹)という。
 そして、「外観は蔵を意識し、屋根は黒く、白壁、背後の山の景色にとけ込むようなデザインにした。入母屋造りで、卯立(うだつ)や海鼠(なまこ)壁があり、外観は古風だが、中身(設備)はHACCP(危険分析重要管理点方式)に準じた仕様になっている」(神田裕貴雄富士古河E&C電設・建築事業部電設事業部建築部長)。
 ことし5月11日に地鎮祭を開き、翌週の15日に本格着工した。

◇人手不足、資材の遅れ克服

 「まず苦労したのが人の確保で、たいへん難しかった」とは現場を率いる中谷七雄所長。「鉄骨も地元は生産が手いっぱいで、納期も厳しい状況にあった」(中谷所長)。最大で2週間弱の遅れが生じた時期もあったが、「作業員を確保するため、打てる手はすべて打った」(同)。そのかいあって、8月下旬から醸造設備の搬入、据え付けが始まり、最盛期のいま、80人を超える作業員が従事し、「棟ごと、部屋ごとに同時平行で作業を進めている」(同)。
 現場には、八木澤商店の会長、社長も頻繁に訪れ、「そのつど進捗状況に驚いている」(中谷所長)という。
 中谷所長は、「これまで同様、引き続き無事故・無災害で施工し、完成させたい」と話している。
 つゆ・たれ製造棟は9月末、残る2棟も10月末には完成する予定だ。
建設通信新聞 2012年9月18日6面

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