2013/10/28

【新国立競技場】29万㎡は「あくまで建設可能最大規模」 スポーツ振興C

ザハの新国立競技場構造イメージ
規模や工事費をめぐって議論が活発化している新国立競技場の建設プロジェクト。国際デザイン競技で選定された英国在住の建築家、ザハ・ハディド氏の斬新なデザインが世界的な耳目を集めただけに、その動向は建設業界にとどまらず社会的な関心を呼んでいる。23日の参院予算委員会では下村博文文部科学相が「膨大な予算がかかりすぎる」として縮小する方向での検討に入る姿勢を示したが、事業の実施機関である日本スポーツ振興センターは、「延べ約29万㎡」「約3000億円」という数字は計画対象地での建設可能な最大規模であり、スタジアム本体に関連諸施設を含めた最高スペックでの金額であると説明する。デザイン競技での提案を現実的な設計図面に落とし込む作業は、これからとなるが、総工事費は当初の「1300億円程度」とする考えも崩していないという。


◇建設費1300億程度が現実的


 新国立競技場の建設費や規模について、日本スポーツ振興センターは、大きすぎると批判のある「約29万㎡」という延べ床面積は、計画対象敷地に対して建設可能な最大規模と説明。基本構想国際デザイン競技でデザインを提案してもらう際の参考的なもので、通常の設計コンペで提示する延べ床面積とは大きく異なると強調する。
 また、総工事費についても、デザイン競技で提示した「約1300億円程度」との考えは崩していない。現在、ザハ・ハディド氏のデザイン提案をもとに設計に落とし込むためのフレームワーク設計業務が大詰めを迎えており、「国立競技場将来構想有識者会議(委員長・佐藤禎一国際医療福祉大大学院教授)」に諮った上で基本設計に向けた具体的な機能、規模や仕様、総工事費などが決まる。
 新国立競技場は、2019年日本開催のラグビーワールドカップメーン会場、20年東京五輪の主会場とすることを踏まえ、規模はIOC(国際オリンピック委員会)基準に合わせるとともに、▽収容人数8万人▽全天候型スタジアムを実現するための開閉式屋根▽臨場感あるスタジアムを実現するための一部可動式の観客席--を備える。また、利用拡大の観点からコンサートなど文化的利活用など多機能型スタジアムとすることなどを建て替えの根幹としている。ただし、設計に向けた具体的な総延べ床面積などは決まっていない。
 新国立競技場のデザイン競技時に提示した「約29万㎡」という規模は、計画対象敷地約11.3haに対して建設可能な最大延べ床面積で、実際に建設する施設規模ではない。言い換えればこれを超えた提案は失格ということになる。設計に向け具体的な規模を提示する設計コンペとも異なる点だ。

◇最大規模の内訳

 最大規模を前提にデザイン競技で示した導入機能と規模は、▽競技等機能(競技場、競技関連諸施設)=約3万2000㎡▽競技等関連機能(競技者等関連諸施設、医務、アンチドーピング諸室、運営管理関連諸室、共用部)=約1万5000㎡▽観覧機能(観覧席、観覧等関連施設、レストラン、売店)=約11万1000㎡▽メディア機能(記者席、放送席、共用部など)=約4000㎡▽ホスピタリティ機能=約2万5000㎡▽防災警備機能(警備関連諸室)=約1000㎡▽スポーツ振興機能(スポーツ博物館、スポーツ関連商業、共用部)=約2万1000㎡▽維持管理機能(管理運営諸室、防災センター、設備センター、設備機械室など)=約3万5000㎡--で、総延べ約24万4000㎡。これに駐車場約4万6000㎡を加えたものが全体規模となる。いずれも各機能の最大規模で、デザイン案の目安に過ぎないという。
 一方、総工事費は、デザイン競技の条件として「1300億円程度」と明記。
 デザイン監修費・設計監理料、スタジアムの施設建築敷地以外の工事費、既存建築物の除去費、什器・備品類、コンピューターなどの機器類などを含まないことも示している。選定したザハ氏のデザインもこうした条件が前提となる。
 現在、日建設計・梓設計・日本設計・オーヴ・アラップ・アンド・パートナーズ・ジャパン・リミテッドJVが進めているフレームワーク設計業務は、こうした機能や規模をそれぞれ精査し、デザイン提案を現実的な設計に落とし込むための前作業となる。
 この過程で、さまざまなケースを想定し、ケーススタディー的な工事費も検討されている。今回問題視された「3000億円」は、最高のスペックで最大規模の施設を建設した場合の一例にすぎず、具体的な設計上の金額ではない。
 また、仮に約1300億円としても建設費は膨大であり、このため、文部科学省では、現在Jリーグに限定されているサッカーくじ(toto)の対象を海外にも広げ、売り上げの一部を工事費に充てるための検討・準備を進めている。
 同センター、日建JVとも基本設計に入る前段階でより計画の精度を高めるとの考えから当初予定していた9月の納入期限を延長している。基本設計に加え、来年4月から着手予定の実施設計も同JVに委託する見通しだ。今回のフレームワーク設計業務の期間延長は、14年7月着工予定の解体や15年10月予定の建設工事には影響ないとしている。
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