2015/05/13

【技術裏表】見積もり作成わずか5分! 工務店の営業を支援するK-engineのクラウドサービス

「利用者が1万社に広がれば、業界の動きに発展する」と意気込むのは、工務店やビルダー向けのクラウドサービスを展開するK-engine(東京都新宿区)の金康公彦副社長執行役員。事業開始から約9カ月で、無料トライアルのユーザー数は3000社を超えた。住宅版BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)とも称されるが、あくまでも「工務店の設計から受注までを支援することが役割」と、生産性向上に向けた営業支援ツールの位置付けを強調する。

 年間1棟以上の戸建て注文住宅を手掛けている工務店やビルダーは全国で約6万社。このうち年間100棟を超えるのは300社ほどで、住宅業界の大半は中小規模の企業で構成している。迅速な顧客対応と生産効率を追求する大手ハウスメーカーとは、事業運営面で大きく水を開けられているのが実態だ。
 大半がCADソフトを使ってはいるが、設計提案から見積もりまでには1カ月近くかかってしまうケースも少なくない。営業担当者も不足し、対応に追われながら受注活動を進めている。「工務店の生産性を抜本的に変えたい」と、LIXILグループの同社が事業をスタートしたのは2014年9月。産業改革機構(東京都千代田区)が20億円の第3者割当増資を引き受けることも決まり、グループ色を薄めた形で本格的に動き出した。

3次元データも提供
そもそも工務店などはCADソフトで図面を描き、市販の見積ソフトなども使ってはいるが、図面と見積もりの一体的なシステムとして運用できていない。そこで同社は数十億円規模を投じて独自のクラウドシステムを構築した。「JW-CAD」「ARCHITREND」という住宅業界の大半が愛用するCADソフトに対応し、クラウド利用者は一定の作図ルールさえ守れば、2次元の図面データを送信してからわずか5分後に3次元データと、見積もりを提供してもらえる。
 これまでは顧客の要求を聞き、事務所に持ち帰って図面や見積もりを作成していたが、このシステムを使えば商談しながら、より具体的な見積もり提案ができる。金康副社長は「大手ハウスメーカー並みのスピードで対応でき、その分の余力を他の案件に回せる」と強調する。14年末から無料トライアルの登録数に動きが出始め、現在は1日に50-100社の割合で増えている状況だ。

建材・資材の製品500万点に対応
詳細な見積もりを迅速に提供できる裏には、同社の地道な努力がある。建材や資材の登録数は現在500万点に達する。各メーカーの売れ筋製品に絞り込み、スタッフが情報を一つひとつアナログで手入力してきた。これまで利用者は販売店と連携して見積もりを作成してきたが、このシステムによって送信した2次元図面の仕様情報からダイレクトに詳細な見積もりを受けることができる。
 金康副社長は「特殊な建材や工法の情報までカバーできていないため、500万点ではまだ足りない」と考えている。事業開始までに300万点の情報を入れ、この9カ月余りで200万点を追加してきた。新商品が発売されれば、1カ月後にはアップするペースで情報を充実させている。ここにはLIXILグループとしての戦略も見え隠れしている。
 製品情報はカタログなどから入手し、各メーカーに許可を得た上で見積もりシステムとリンクさせている。「この基盤情報がきっちりと整っていなければ、システムは機能しない。ライバルメーカーの情報も充実させることで信用も得られる。LIXIL製品だけでは商売は成り立たない。もともと販売シェアは高く、見積もりに選ばれるケースも比例すると考えると、グループにとっても優位性を発揮できる」(金康副社長)。
 クラウドは月5000円で年10件の3次元化や見積もり依頼ができ、月5万円出せば無制限に利用できる。目標に定める無料トライアル1万社は早ければ年内にも達成する見通し。「100社に1社が利用しても業界の動きには発展しない。住宅業界6万社のうち、6分の1の1万社が集まれば業界のプラットフォームとして位置付けられる」(同)。住宅業界の生産性向上に向けた同社の挑戦は始まったばかりだ。
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