木質接着複合パネルの組み合わせで、大規模木造建築を実現するミサワホームのFWS(フューチャー・ウッド・システム)構法。初適用するミサワホーム静岡の新社屋ビルでは2方向ラーメン構造により、長さ10mのロングスパンを計画した。開発に携わったミサワホーム総合技術研究所の松下克也大規模木造研究プロジェクトリーダーは「柱や梁の内部を中空にできる構法の利点が、コストダウンと工期短縮の大きな効果を生む」と明かす。
◇2009年から開発
FWS構法の開発は、2009年にさかのぼる。住替えや家族構成の変更に伴うリフォームの要求拡大を踏まえ、完全スケルトン・インフィル(SI)住宅の研究をスタートさせた。そもそも木質接着複合パネルを使った同社の住宅は耐力壁強度(壁倍率)が通常の2倍近くに達するほど頑丈なつくりを誇っていた。
この強みを生かす方法として出てきたのが、これまで柱や梁部分に耐力壁として設置していた木質接着複合パネルの幅をあえて狭くするアイデアだった。11年初めには構法の骨格が固まり、実際の展示場に2階建ての完全SI住宅モデルを建設しようとした矢先、計画中だった静岡新社屋への採用が急きょ決まった。
完成予想 |
公共建築物木造利用促進法の施行を契機に、大規模木造建築への追い風が吹き始めたほか、創設された「木のまち整備促進事業」の先導モデルプロジェクトに採択されれば、優遇措置の補助金も受けられることが背景にあった。ただ、オフィスへの構法適用には床の積載荷重で、300㌔以上に耐える必要があり、構法の新たなプランを検討し直す必要があった。
考案したのは、木質接着複合パネルを2層に重ね、ボックス形状に組み合わせる方法だった。4隅に18cm角の集成材を置き、2層のパネルで囲い込む。梁は幅60cm、高さ90cmとし、柱はともに60cmに設定した。梁と柱の先端部には金物部材を取り付け、接合する際には4カ所のボルト締めだけで固定できる機能も合わせて開発した。
◇柱や梁に中空部分
大規模木造建築の技術開発が相次ぐ中で、この構法が他社と大きく異なるのは木質パネルの組み合わせによって柱や梁に中空部分が形成される点だ。松下氏は「木材の量を半分ほどまで軽減できるコストメリットは大きい」と強調する。建設中の静岡新社屋は3階建て延べ2894㎡。外装にガラスカーテンウォール、屋上面に最大出力約50kWの太陽光発電システムを設置しても「工事費は坪65万円に抑えられる」と試算している。
12年10月に着手した工事は、ことし5月末に完成する予定だ。工場生産された柱や梁は現場に運ばれ、順にボルト締めで組み立てられる。この躯体の建て込み作業はわずか2週間で完了し、全体工期を大幅に短縮した。建物荷重はRC造に比べて3分の1ほどに軽減でき、基礎部分の省力化につながった点も工期短縮の効果となった。
◇介護、幼稚園で引き合い
既に同社には、介護施設や幼稚園など数件の引き合いがあるという。静岡新社屋では、柱や梁の部材をあえて長さ4m単位に切り分けた。都心部でのニーズに対応するため、2tトラックで運べることを想定したからだ。耐火条件の関係で4階建てに限定されるが、1階部分をRC造とした5階建ての複合構造も商品プランとして確立しており、オフィスや商業施設などの民間工事に加え、小中学校などの公共施設も受注ターゲットに置く。
先導モデルに採択された「赤羽の集合住宅プロジェクト」(東京都北区)にも、構法の採用が決まった。当初、展示場で試みる予定だった完全SI住宅モデルの考え方が採用される予定で、パネルの提供と建て込みを同社が担う。このように大規模木造建築のニーズには元請けだけではなく、協力会社として参画する選択肢も想定している。松下氏は「設計事務所や建設会社と組み、FWSを公共工事にも提案していきたい」と強調する。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年4月17日
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