2013/04/12

【記者座談会】激震!! 「新労務単価」に課せられた産業責任 待遇改善待ったなし

単価の上昇を現場のすみずみに行き渡らせるか、
産業界挙げての対応が求められる
A 2013年度の公共工事設計労務単価が大幅に上昇したが元請団体の反応はどうだろう。
B 国土交通省から上昇の理由やその意味などについて、各元請団体は詳しく説明を受けたようだ。だから、国交省の考え方はよく分かっているし、単に上昇したから良かったという話ではなく、「自分たちがきちんと払わなければならない」という意味も理解している。産業責任の重さは理解しているのだけど、では何をするか、どうすればその意思を実際の行動として示せるか、という点で頭を悩ませている。まだ答えを探している感じだ。
A 地方業界はどうかな。
C 歓迎の前に驚きが来たというのが率直なところだろう。この間、デフレスパイラルのような閉塞感ばかりで、上昇したとしてもコンマ数%なんていう状態が続いていたわけだから。ただ、業界からは「これまであれだけ単価アップを要望してきても実現しなかったのに…」と、困惑の声があるのも事実。調査方法をこういう風に変えたからこれだけ上がった、といった内訳を知りたいという声もある。
D 正直、業界の中には今回、国交省が単価上昇を通じて発しているメッセージの重みを受け止めきれていない部分もあるような感じがする。
B 元請けの悩みは、下請けの悩みともつながっている。元請けがどれだけ払うと言っても、実際に作業員に渡らなければ何にもならない。社会保険未加入問題とも共通しているのだけど、実際にどう払うようにするのか、払ったことを確認するかが、かぎを握るだろう。産業界挙げて、対応しなければならない大きな課題を国交省に突きつけられたと見てよい。
E 建設産業専門団体連合会の才賀清二郎会長が言っていたけど、「新しい労務単価の額が作業員に渡るのは、6月くらいからだろう」というように、工事が始まって、作業員の手元に届くまではタイムラグがあるし、民間工事での対応という問題もある。
C 「民間の建築工事はほとんど赤字だから、単価上昇はありがたい」と思わず漏らす営業マンがいたけれど、確かに元請けから下請けに適切に支払いが行われていかないと、元の木阿弥になってしまう。入職者を確保していくという、建設産業全体の将来にかかわる施策展開の真っただ中にいるのだという認識がないと、早晩取り返しのつかないことになる。
D ただ、会社としてみればどうしても当面の受注が最優先になる。営業担当者にとっては新単価への切り替えがどのように進むのか、どれだけ影響が出てくるのかが差し当たっての気がかりで、既に発注者の対応などの情報収集に走り回っているようだ。
A 特に12年度補正予算に伴う工事の取扱いには業界も関心が高い。
B 国交省は3月中に入札した工事でも契約が4月1日以降になる案件には13年度の設計労務単価を適用するとした特例措置を8日付で各地方整備局などに通知した。これにあわせ、都道府県や政令市にも適切な運用を要請したほか、業界団体にも技能労働者への賃金引き上げ徹底を求めている。
C 地方でも新潟、石川両県は反応が早く国交省の要請に応じる姿勢を示している。
A 大きな方向性を見失わないことが大切だ。加重平均で16.1%という今回の上昇率は確かに大きい意味を持つが、一方で建設生産を第一線で支える技能労働者の現在の収入に目をやれば、とても生涯を託せる産業だと胸を張れる状況にはない。人材問題は産業の存続にかかわるだけに、賃金を含めた待遇改善は待ったなしだという危機意識が官民、元下を問わず必要だろう。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年4月12日

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