小児科の「きくちこどもクリニック」は、千葉市緑区にある。元は医療モールの1テナントだったが、治療に合わせたスペースを造りたいとの施主の考えから新築された。設計を担当した森田建築設計事務所(千葉県佐倉市)を主宰する森田敬介氏は、計画時に全国で新型インフルエンザなどの院内感染が問題となっていた中で「来院者を早くトリアージ(振り分け)することが設計の1つのテーマとなった」と語る。
感染症の疑いがない場合は一般待合に通し、疑いがある場合は程度により隔離室、個別待合、発熱待合に案内するため、風除室に入口を2つ設けた。一般待合と発熱待合は緩やかに仕切られているが、「予防接種や勉強会の際はつなげて広く利用できる」ようにした。一般待合への感染を抑えるため、一般待合から発熱待合への空気の流れもつくった。
不均等ラーメン構造を採用することで自由で広い空間が得られ、曲線を多用した柔らかな区画を生み出した。さらに見晴らしが良く、夕日がきれいに見えるため、2階北側のガラスを屏風(びょうぶ)状にデザインすることで長時間にわたり外観に夕日が映えるようにした。
現在のクリニックに移転後、施主からは「やりたいことがスタッフに伝わっており、資格取得など意識も向上している」との声が寄せられている。*「運斤成風」(うんきんせいふう)
巧みな技のこと。技術者たちの風を巻き起こすような創造過程に迫ります。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年4月3日
0 コメント :
コメントを投稿