2013/04/30

【BIM】3次元で事業リスク回避 アラップが提唱する「BEM」

アラップのBIMモデル
「海外のインフラプロジェクトではBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の導入が必要不可欠」と力説するのは、世界38カ国に90を超える拠点を持つアラップ(本社・ロンドン)でインフラ部門アジア圏責任者を務めるファーガル・ホワイト氏。同社が東京都千代田区の駐日英国大使館で開いた海外インフラ事業セミナーでの一幕だ。近年は世界各地で空港や高速道路、水処理などの事業コンサルをこなす中で「オペレーションまで含めた対応が強く求められる状況になってきた」と説明する。建設プロジェクトの計画段階には、事前に事業の問題点を導き出す必要がある。「そのコミュニケーションのツールとしてBIMが使われている」
 3次元モデルを活用することで、事業全体、さらに部分的な解析が実現できる。都市部の土木プロジェクトのように既存地下躯体との近接施工事例も多く、事前の詳細なシミュレーションが欠かせない。建築プロジェクトでは生産合理化の観点から注目されているBIMだが、ホワイト氏は「インフラプロジェクトでは事業リスクを回避する手段として使われている」と強調する。
 同社は、BIMの考え方を展開した独自の概念として「BEM(ビルド・エンバイロメント・モデリング)」を提唱し、数々の建設プロジェクトに展開している。より川上の段階から事業化の障害を把握し、対策を講じる。「例えば運用時の検証も詳細に見える化でき、場合によっては人の行動パターンを事前に把握し、それを設計に反映できる」。シンガポールの総合リゾートホテル『マリーナ・ベイ・サンズ』も、その事例の1つだという。
 鉄道プロジェクトのように、複数の工区で形成されている事業では「プラットフォームを形成し、トータルでリスクは共有する」手段としてもBEMは有効だ。「事業全体を通してデザインや機能を合理化することが、コストや工期の大幅な縮減効果を生む。成長産業であるエネルギー分野では事業成功の糸口としてBEMの導入は欠かせない」
 日本企業の海外進出に向けたパートナー募集の目的で企画したセミナーには、事業開拓に前向きな商社や金融機関、ゼネコンなどから総勢60人が参加した。
 壇上に立ったホワイト氏は冒頭に「日本のインフラ技術は世界各国からのせん望の的であり、もっと海外進出を積極的に進めるべき」と切り出し、「ぜひ一緒にパートナーを組みたい」とラブコールを送った。

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