2013/04/09

【復興版】「黒と白の家」復興住宅モデルを発表 新宮城の家づくり協会

白の家


黒い家
宮城県岩沼市三軒茶屋地区の復興モデルハウス展示場で景観やデザインにも配慮した意欲的な復興モデル住宅の建設が進む。地域型復興住宅生産者グループ「新宮城の家づくり協会」が、地場産材を使い、地域の風土に根付いた住宅をつくるプロジェクトとして取り組む、“みんなでつくるみやぎのいえ"シリーズの『黒い家』(手島浩之氏)と『白の家』(安田直民氏)だ。日本建築家協会(JIA)東北支部と宮城地域会が監修した。オープンは5月上旬。設計協力で参画している若手建築家2人に、両住宅のコンセプトや、復興支援への取り組みを聞いた。

◇黒い家 都市建築設計集団UAPP
 地域に伝わる要素取り入れる

 少人数世帯のために計画された『黒い家』は、「2階建てだが半外部空間の土間を含むワンルームの田の字プランの1階の中で生活が完結できるよう水回りを中心に、すべてに視線が通るようにデザインした」という。
 スギ板の黒く艶やかな木目が特徴の住宅は、「長期優良住宅の認定を得るため、性能の向上にこだわりつつ、地域に伝わる日本家屋のエッセンスを取り入れた」とコンセプトを説明する。
 アプローチ空間にある格子状の下屋は、「塀や生け垣で周囲と隔離するのではなく、景観やまち並みをコントロールする新たな素材」ととらえ、防災集団移転事業で誕生する新たなまちの“顔"としての印象を与える。
 一方、JIA宮城地域会内の中でも勉強会を立ち上げ、パネル工法の検討に着手した。「『黒い家』と『白の家』で、在来工法による地域型復興住宅の一つのモデルを提示したが、大量生産と迅速な住宅供給の面で課題が残る」とし、「建築家もモダニズムの時代からパネル工法に取り組んできた歴史がある。まちの製材所や家具屋が生産できるようなライセンスフリーの生産システムをつくりたい」と力を込める。
 震災以降、JIAメンバーとして、石巻市北上地区での高台移転に向けた住民ワークショップや、地区中心部の将来を考えるまちづくり委員会などをサポートし、住民と行政をつなぐ役割に奔走する。「他地区からもワークショップの開催を求められ、活動は広がっているが、現地をサポートする人手が足りない」と支援を呼び掛ける。

◇白の家 SOYsource建築設計事務所
 量産と手づくりの中間目指す

 『黒い家』とは対照的に左官仕上げの外壁が目を引く『白の家』は、「工務店が造りやすい、量産と手づくりの中間の住宅を目指した。最近の住宅はコスト削減やスペック重視の風潮が強く、地域の伝統的な建築様式が失われつつある中、伝統的なスタイルを取り入れた」とこれまで培ってきた住宅設計へのこだわりを見せる。
 設計コンセプトについては、「2階建てだが、階高を下げることで、建物全体のボリュームを抑えながらも必要な面積を確保した。家族全体の動きが見えるよう扇の要となる吹き抜けのリビングを中心に配置にするなど、いまどきのニーズをくみ、被災者だけの特殊解ではなく、誰もが買いたいと思える普通の家づくりを目指した」と説明する。
 また、建物には日照をコントロールし、効率的に換気を行うため、4尺5寸の庇(ひさし)や格子状の下屋を設けた。 
 復興住宅の生産を契機に新たな住宅生産システムに関心を寄せる。手島氏とともにパネル工法の勉強会に取り組む。「高い技術を持つ職人も多いが、落とし板倉構法や土台のアルミ化、基礎のプレキャストコンクリート化など、人手不足を解消する仕組みも必要」だからだ。
 かつて所属した坂倉建築研究所とのJVで都市再生機構が発注した大船渡市宇津野沢地区などの災害公営住宅の設計も担当した。「住宅関係の復興に取り組む中で、さまざまなつながりが生まれた。阪神・淡路や山古志を経験した人たちの持つ知識や力は大きい」と全国的な連携の重要性を説く。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年4月9日

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