2013/04/06

【BIM】建築確認もBIMデータで 加賀電子本社ビル新築工事

加賀電子本社ビル新築工事
東京都千代田区で建設中の加賀電子本社ビル新築工事は、サーバー上の3次元モデルデータを共有し、設計者と施工者が密に合意形成する一歩進んだBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)現場だ。建築確認や仮設計画の届け出には2次元の申請図面をBIMデータから出力した。基本設計と監理を安井建築設計事務所、実施設計と施工を竹中工務店が担当している。両者は「チャレンジングなプロジェクト」と口をそろえる。


モデルを使ってスタットと鉄筋の干渉を回避する
◇施主との打合わせをペーパーレスに

 「基本設計と言いつつも、実は実施設計に近い精度までモデリングしている」とは安井建築設計事務所執行役員東京事務所副所長設計部長の村松弘治氏。デザインレビューでは3次元データを使い、隣接する首都高速道路からの見え方を徹底的に検証したほか、既存建物の躯体が残った形で山留め壁を再利用する地下部分にも3次元のシミュレーションで状態を検証した。「施主との打ち合わせではすべてをペーパーレスでやろうと、BIMをフル活用してきた」と強調する。
 こうした姿勢が施工者選定にも影響を与えた。技術提案の条件にBIMが加わり、最終選考に残った竹中工務店も3次元を駆使したプレゼンテーションを行った。ビジュアルな表現に加え、プロジェクトの詳細まで理解しやすい点で、施主に対するBIMの評価も上々だったようだ。


構造データから鉄筋データを入力、数量表や加工図に展開した
◇高精度で実施設計に渡す

 「これほど精度の高いBIMデータを引き継いだのは初めて」と、実施設計を担当した竹中工務店東京本店設計部設計第7部門設計担当課長の橘保宏氏は振り返る。近年の建築プロジェクトでは実施設計から受注する機会が増えているが、あえて基本設計からやり直すケースも少なくないだけに「BIMによるデータ連携の効果を強く感じた」
 竹中工務店では解体工事の約6カ月間を利用し、施工検証にBIMデータを積極的に活用してきた。東京本店設計部プロダクト設計部門設計担当課長の森元一氏は「ここでは意匠、構造、設備のBIMモデルを組み合わせ、ワンファイルで情報をコントロールしている。現場の手戻りは事前に軽減できている」と胸を張る。
 構造部分では鉄骨製作時にBIMデータを提供したほか、試行的に3次元化した鉄筋加工図では柱のスタットと鉄筋がぶつかる位置までも確認し、事前に組み方を変える対策を講じることができた。建築確認とともに、労働基準監督署に申請した仮設計画の図面もBIMデータから出力した。

◇設備業者もBIM能力で選定

 社内のローテーション制度を使い、プロダクト設計部で同現場の施工図を作成していた染谷俊介氏を3次元データの担当者として現場に招き入れた点もBIMの推進効果を生んでいるようだ。作業所長の増田恒茂氏は「BIMモデルをもとに、基礎部の配筋形状や鉄骨の取り合いなどを事前にチェックできる人材が現場にいるのは大きい」と感じている。鉄骨の3次元施工図が整っていることで「協力会社との数量確認もやりやすかった」(染谷氏)。
 現場は3次元データを軸に運営され、設備も昇降機もBIMのできる協力会社が選定された。森氏は「まさにBIMを先導する精鋭たちがそろった格好。施工者としてBIMを有効に活用するにはデータをどう運用するかが重要なポイントになる。それができなければ、逆に手間ばかりかかってしまう」と説明する。
 竹中工務店の社内サーバーにアクセスし、現場での変更点をリアルタイムに確認している安井建築設計事務所にとっても「躯体鉄骨部分だけであるが、3次元モデルで設計監理の承認を行った初めてのケースだ」(村松氏)。現場の進捗率は現在25%。ことし11月の完成に向け、工事は順調に進んでいる。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年4月3日

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