下水道管の推進工事において、ケーシング(鋼製円筒)を使った立坑築造工法として多くの実績を持つ「PIT(ピット)工法」。その普及や技術向上に取り組むPIT&DRM協会(横浜市)は、近年ニーズの高まる防災都市づくりに貢献するため、雨水貯留槽や防火水槽などを埋設する工事への応用技術を確立した。新たな用途での活用に向けて「PIT+1(ピットプラスワン)工法」と名付け、本格的な提案活動をスタートした。
◇わずか3日で本体工事
PIT+1工法は、タンク1基当たりの本体工事を3日程度で完了できる。従来型のRC製水槽が2週間ほどかかるのに比べると、大幅な工期短縮につながるほか、コストも約3割安く済む。大がかりな施工機械も不要なため、都市部の密集市街地など狭い場所でも施工可能だ。
埋設するタンクは、メンテナンスフリーのFRP(繊維強化プラスチック)製水槽。縦型で占有面積が小さく、内側に特殊な塗装を施すことで、緊急時用の生活・飲料水を蓄えることもできる。
施工手順は、まず直径約2000mmのケーシングを地中に圧入し、その内部を掘削する。次に、クレーン車で立坑内にタンクを据え付ける。タンクに注水した後、ケーシングとの隙間にモルタルを充填し、ケーシングを引き抜く。タンク全体を埋設するタイプの場合は、上部にコンクリートを打設して仕上げる。
引き抜いたケーシングは繰り返し使えるため、設置するタンクの数が多くなるほど、コストパフォーマンスは高まる。
タンク設置後、ケーシングを引き抜く |
PIT+1工法の公共分野における初適用案件としてこのほど、東京都大田区内の公園で防火水槽設置工事が実施された。工事は同協会会員のハシックス(本社・横浜市、橋本行男代表取締役)が大田区から受注。密集地での火災発生時の初期消火用に、容量5m3のタンク1基を埋設した。掘削深度は約5m。タンク部分の本工事は3日で完了した。
今回は防火水槽だったが、この実績をもとに普及拡大に弾みを付け、集中豪雨やヒートアイランド対策に役立つ雨水浸透枡(ます)、雨水貯留槽の埋設工事にも生かしていきたい考えだ。同工法については、CNT(本社・高松市、佐々木克幸代表取締役)が特許を出願している。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年4月10日
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