微妙な色合いの変化をアルボリックで表現した韓国の消防署 |
バリエーションが多く、素材感まで選択が可能だ |
アルポリックは、芯材にポリエチレン、表面材にアルミなどの金属板を張り、その上を塗装加工する5層構造。厚さ1-8mmの複合板でありながら、熱を使わなくても曲げ加工できる。幅1600mm、長さ7200mmの大板としても生産でき、建物内外装のあらゆるニーズに対応できる。
販売当時は看板やドアに使われてきたが、いまでは内外装や天井・軒天、水まわりなど多機能な表層材としての地位を確立している。複合材事業部の長谷善博グループマネジャーは「防火性能を引き上げた2000年を境に用途の幅が一気に広がり、それが海外実績を押し上げる要因の1つになった」と振り返る。
10年には芯材の不燃性を高めることに成功し、日本の不燃認定基準よりも高い欧州の防火グレード「A2」を取得した。欧州では建築基準の相互認証に乗り出す動きがあるほか、建築プロジェクトの中には欧州基準(ユーロコード)に沿った製品導入を前提にする案件も少なくない。
5層構造で構成している |
アルポリックの生産拠点は国内2カ所と米国1カ所で、年間生産能力は日本が800万㎡、米国が200万㎡の計1000万㎡に達する。海外の出荷量は全体の4割。需要が伸びている欧州市場には日本の工場からも出荷しているが、中小規模の建築工事では輸送の関係で納期に間に合わないケースもある。
現在、ドイツのヘッセン州に建設中の生産工場は、14年春に完成する予定だ。年間生産能力150万㎡を計画しており、トルコや中央アジア地域を含めた欧州エリア全体をカバーする海外第2の生産拠点に位置付ける。
ドイツでは建築パネルとして、アルポリックのシステム認定を取得中で、今夏にも許可が下りる見通しだ。フランスでも取得を検討しており、高層ビル案件への採用拡大に一層の弾みをつける。久原事業部長は「対応しづらかった欧州の中小案件も含め、全方位で取り込むことができる」と手応えを口にする。
シンガポールの総合リゾートホテル『マリーナ・ベイ・サンズ』や台湾の『台北アリーナ』などのように、海外では外装材としての使われ方が大半を占めるアルポリックであるが、日本では天井や軒下パネルを含め内装材として使われるケースが多い。ガラスカーテンウォールが普及する日本と違い、海外ではチタンやステンレスの金属表面に加え、石目柄や木目調など多彩な意匠のニーズがある。「色味も風合いも自由自在に変えられるアルポリックの特性が生かされている」(長谷グループマネジャー)。
グラントウキョウサウスタワーに 2000平方㍍使用された |
国内では、ガラス外装のバックパネルに組み込まれる使い方も増えているというが、外装用途は国内出荷の1割にも満たない状況。ただ、リニューアル案件には外装材として使われるケースが急速に増えている。アルポリックが建物を包み込むカバーの役割を担い、壁面落下の防止効果も得られるからだ。
近年は国内マーケットを意識し、外装材としての機能強化を進めてきた。太陽電池一体型『ジオア』を商品化したほか、現在はメンテナンス性能の向上を目指し、光触媒の導入に向けた技術開発も進行中だ。久原事業部長は「国内は外装材として、海外は内装材としての認知度を高めたい」と強調する。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年4月10日
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