東亜道路工業は、走行中に電気自動車(EV)の充電ができる舗装システムを確立した。給電装置を埋め込んだ部分の舗装に使う特殊なセメント材を開発。通常の舗装工事で行われる転圧作業が不要になり、装置の断線などを防げる。深さ4cmほどの浅い層に、装置を埋められるようにしたのも特長の一つ。給電コイルを道路に埋設する非接触給電の研究開発は、欧州や韓国など海外勢が先行しているとされるが、それらに比べ大幅な低コスト化を実現できるという。
◇社内PTで横断開発
同社は施工技術だけでなく、化学メーカーとしてのノウハウを結集。次世代の道路のあり方を考える中で、いち早くEVに着目し約3年前から調査研究を進めてきた。それまでは、車両側の装置の研究は行われてきたが、道路側は手つかずだったという。部門横断型の社内プロジェクトチームで検討を重ね、昨年12月に試験施工にこぎ着けた。
舗装材料や断面、磁力を効率よく上面に発生させるシールド材の配置などを変え、5つのパターンを施工した。日産自動車に提供してもらったEVを使い、受電・走行できることを確認。東亜道路工業は実路での試験を通じ、「机上の計算や模型実験では可能と分かっていても、実際にやってみないと分からない部分がある」(新田浩企画開発課長)という懸念を払拭した。
表層に近いところに給電コイルを埋設することで、車両側で受電しやすくなるほか、コイル自体の出力も小さくて済み、コストを抑えられる。
試験設置から3カ月以上が経つが、良好に受電を続けられており、5パターンの中から、より優れたタイプも見えてきているという。引き続き、受電試験を行うとともに、特殊舗装の防水性や耐久性、メンテナンス方法、周りの舗装への影響なども調べていく。
◇世界唯一の仕組み
停止中の車両に非接触で給電する技術は、ほぼ実用化段階にあるが、走行中となると、受電効率などクリアすべき課題はまだまだ多い。同社が開発したシステムの詳細は企業秘密だが、「世界で唯一の仕組み。コストや施工性も、より現実的なものとなっている」(青木和直企画開発部長)
将来的には、高速道路に給電専用レーンを設けてEVのロングドライブを可能にしたり、街づくりに組み込んで一歩進んだスマートシティーの実現に貢献するなど、道路の価値向上に生かしていきたい考えだ。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年4月8日
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