2013/04/11

【復興版】放射性下水汚泥を減容、安定化 JSらが福島で乾燥施設稼働

日本下水道事業団(JS)は、放射性物質を含む下水汚泥を減容化するため、福島市堀河町終末処理場に仮設下水汚泥乾燥施設を設置した。造粒乾燥技術を保有する新日鉄住金エンジニアリングと原子力安全に関する知見を有する三菱総合研究所を共同実施者に、環境省から受託して2011年度に調査、計画など、12年度では設計と建設を進めていた。

◇施設運転を開始
 現地で6日に開かれた同省主催の落成式典で石原伸晃環境相は、「本事業に続いて福島県内において、地元のご理解、ご協力を得て、廃棄物処理や除染を進めていきたい」とあいさつ。JSの山本徳治副理事長は事業提案の経緯を述べた後、今後の維持管理に当たって、「周到な準備と緊密な連携のもと、気を引き締めて取り組む」と意気込みを語った。このほか、落成式には瀬戸孝則福島市長、渡辺宏喜福島県土木部長、地元町内会長が参加。関係者らが稼働ボタンを押し、施設の運転を開始した。

◇保管スペースを改善
 同処理場では、東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故により、放射性物質が検出された下水汚泥が処分できず、場内に保管せざるを得ない状況が続いていた。このため、JSなど3者は11年度に環境省に企画提案し、下水汚泥の乾燥処理によって保管スペースを改善し、汚泥性状を安定化して場外に搬出しやすくするための調査を受託。引き続き施設の設計に入り、新日鉄住金エンジニアリングを中心に建設を進めていた。


減容した汚泥はドラム缶とパレットで保管
ドラム缶で保管

 乾燥施設では、保管されている比較的放射能濃度の高い脱水汚泥と日々発生する放射能濃度の低い脱水汚泥を混合し、1日24時間運転で約30t、13年度末までに約4200tの脱水汚泥を乾燥する。脱水汚泥は水分を飛ばして約5分の1の容積の粒状の乾燥汚泥として、ポリエチレン製の袋に窒素と封入、これをドラム缶に詰めて密封する。放射線管理を万全に行うため、ドラム缶は4缶を1つのパレットに搭載。コンクリート厚が40cmある、現在使用していない水処理施設内に収納する。汚泥と接触する機器は密封構造とした上で、排気は高性能のバグフィルターを2回通過させ、放射能濃度を常時測定・監視しながら屋外に排気する。さらに、設備類を収納するテントを二重構造とし、負圧で管理しつつ外部への漏洩を防ぐ。
 今後の維持管理業務は三菱総合研究所が専門業者に委託して実施する。新日鉄住金エンジニアリングは、運転管理の指導、定期点検、修繕などを担当。JSはプロジェクト全体の進行管理や汚泥乾燥に関する専門的な助言・指導を行うことにしている。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年4月11日

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