2014/04/06

【BIM】照明設計は、もはや照度から輝度へ 解析ツール「ルミセプト」

照明設計は従来、机上面や床面が受ける照度(ルクス)を手がかりに行われてきた。近年では、床・壁からの反射光を含めて人間が感じる輝度(カンデラ)も重視されている。例えば机上はデスクライトで十分に照らし、部屋全体は間接照明などで必要最低限の明るさを確保するタスク・アンド・アンビエント照明のほか水平ルーバーや鏡面ダクトにより自然光を導入する場合などだ。ただ、輝度を把握するには、クロスや家具など多様な素材から反射してくる間接光の影響を考慮しなければならない。
 そこで、完成後の明るさや素材感を、物理的に正しく事前に把握できる光シミュレーションの重要性が高まっている。インテグラ(東京都新宿区、兵頭誉志社長)が開発した『Lumicept(ルミセプト)』は、大規模空間であっても照度や輝度を解析できるソフトとして、大手組織設計事務所や大手・準大手ゼネコンなどで活用されている。
 ルミセプトは、光源から数千万-数億本の光線を飛ばし、追跡することで、精度の高い解析を素早く行う。クロスや家具に反射した後の光線まで追跡し、これらの素材感を忠実に再現できる。光源側と視点側の両面から計算することで、解析速度を速めている。計算を中断しても計算時間に合わせた精度で結果を表すことも可能である。照明だけでなく、緯度・経度・日時を設定すれば太陽光を組み合わせて解析できる。
 解析結果は、リアルな画像で表現するレンダリングに加え、照度や輝度のカラーコンター図、光線などで表現でき、設計やクライアントへの説明の信ぴょう性を確保できる。
 こうした解析を行うためには従来、ルミセプトに取り込んだ建築モデル(DXF、3DS形式など)のパーツごとに、天井・壁・床や窓・ドアには反射率・色・模様・透過率・屈折率などの属性、照明にはメーカーなどが作成している配光データを入力する必要があった。
 近年はBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)データに建物情報を一元化する動きがある。兵頭社長は「今後はCADデータの段階でこれらの属性入力が進み、そのルール化も期待される」と先を見据える。
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