2014/04/02

【技術裏表】長さ224メートルの長大ライン TOTOの次世代型便器工場

下地検査にLEDライトを使う徹底ぶり
フル生産状態が続くTOTOの滋賀工場。2年前に稼働した西棟ではタンクレストイレ「ネオレスト」などの腰掛け便器が原料から一貫生産されている。田辺宏之工場長は「まさに次世代工場のロールモデルが実現した」と胸を張る。エネルギー消費量を40%減らした上に、生産効率を25%高めることに成功し、見事に省エネ大賞最高位の経済産業大臣賞にも輝いた。
 同社にとって23年ぶりの国内新工場である西棟が稼働したのは2012年2月。製造ラインをできる限り直線で効率よく配置するため、建物長さは長辺方向で224mにも達した。設計と建築工事を担当した竹中工務店に、200mを超える直進通路をもつ工場は初めて、と言わしめるほどだ。
 1階から4階までに配置された製造ラインは、原料調整、成形、乾燥、検査、施釉、焼成、組立の7工程に区分けされる。衛陶生産本部の田原裕之衛陶設備技術グループリーダーは「軟らかい状態の成形品には、既に475項目にも及ぶ製品履歴がインプットされている」と、成形時に付けられる小さなバーコードを指さす。厳密な生産管理が実現し、注文後すぐに製品を手配できる在庫レスが可能になった。
 成形の時間も、従来の6分の1に短縮された。泥しょうを流し込む型を石膏から樹脂に変更し、加圧による自動成形と取り外しが実現。これまでは手作業で抜き差ししていたため、トータルで120分ほどの時間を費やしていたが、現在はわずか20分で作業を完了できるようになった。
製造ロボットは9種類32台
これを下支えするのがロボット技術だ。アームの先に取り付けたカメラで場所を厳密に割り出し、便器の胴部分とリム部分の取り付け作業を完全に自動化した。釉薬や焼成の工程にも採用され、西棟だけで9種類計32台のロボットが導入された。これにより生産効率は従来と比べ25%アップを実現した。
 場内の空調設備も従来と大きく変わった。田原グループリーダーは「工場でありながらも、オフィスビルに使われるマルチエアコンを導入している」と明かす。旧西棟では1つの空調設備で対応してきた。ここでは空調エリアを11分割し、中央制御によって最適な運用を進め、年間72万kW時もの節電に成功した。空調エリアを建物内部に限定するレイアウト設計の効果に加え、下地検査にもLEDライトを使う徹底した省エネ活動も下支えしている。
 釉薬の塗られた便器が時速7.5㎞でゆっくりと窯の中を進む焼成工程。長さ111mの窯の中を15時間かけて通過する。窯の構造は従来の煉瓦ではなく、厚さ約30cmのセラミックファイバー層とし、熱効率を格段に高めた。窯内は焼き加減を最適化するため温度差が異なる。風で温度調整を行うが、その際に発生する廃熱を別のエリアに使うことで、都市ガス消費量を従来より71%も削減することに成功した。
 旧棟と比較した場合の電力量は18%の削減、都市ガスは49%の削減となり、トータルでは43%もの削減効果につながった。衛陶生産本部衛陶技術部の鈴木裕之部長は「当初目標は30%だった。空調と窯の省エネ効果が予想以上に大きかったが、工場内で当たり前のように取り組んできた環境活動がさらに数字を押し上げた」と強調する。
7月末を目指し第3の窯を建設中
建て替えの投資額は1期工事と2期工事の合計で約150億円。年36万ピースの生産能力は7月末に完成する3本目の新窯ラインが整えば、最大54万ピースまで量産できる。消費増税による住宅市況の伸び悩みは工場の稼働にも影響を与えかねないが、あえて積極投資に乗り出した背景には住宅ストック(リモデル)からの売上高比率が7割に達し、新築需要に左右されない事業戦略に確かな手応えを持っていたからだ。
 同社最大の生産拠点である小倉工場は、既に窯設置後40年以上が経過している。「維持更新の際には、滋賀工場西棟の導入技術を水平展開する」(鈴木部長)。今後3種類を追加予定の新商品では、滋賀工場をベースに生産検証を進める方針。新たに滋賀ブランドの腰掛け便器が登場する日も近い。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

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